アニメやゲームファン=いわゆるオタクたちによる「聖地巡礼」が流行し、一般層にまで知れ渡るようになったキッカケの一つ『らき☆すた』を筆頭に、なぜだか埼玉県を聖地とする人気作品が多かったこともあってか、00年代後半から埼玉県は全力で「アニメで観光振興」事業に乗り出している(なお、オタクによる『聖地巡礼』の元祖的存在は、長野県大町市が舞台のアニメ『おねがい☆ティーチャー』とする説も)。

saitama_550.jpg「ちょこたび埼玉」より

 観光情報サイト「埼玉ちょ~でぃーぷな観光協会」の立ち上げ、09年には「埼玉県アニメツーリズム検討委員会」も設置。埼玉が舞台とする作品が集うイベント「アニ玉祭(アニメ・マンガまつり in 埼玉)」を13年から毎年開催、さらに県内の埼玉県の公式観光サイト「ちょこたび埼玉」では、埼玉県内のアニメ関連イベント、作品を紹介する専門ページも用意。

 そして15年には「浦和の名がつく8つの駅」をモチーフとした『浦和の調(うさぎ)ちゃん』という、オリジナルショートアニメがテレビ埼玉で放送されたほど。県内の各市町村でも数々のイベントなどが行われているほか、西武鉄道や東武鉄道など県内を走る交通機関とのコラボイベントも活発。それだけに、飯能市も当初から『ヤマノススメ』と積極的に交流を深めていったという。

「連絡をいただいた翌年の春から、市役所の人間と、市内に店舗や事業所を構えていらっしゃる企業さんがたと一緒に、『飯能アニメツーリズム実行委員会』を設立しました。そこを基点に、お祭りやイベントのときにアニメにからめた催しを考えてみたり、ファンミーティングのようなイベントが行われる際はすこしご協力させていただいたりしています。

 ただ、『飯能アニメツーリズム実行委員会』以外でも個別に、たとえば飯能駅近くの商店街『飯能銀座商店街』さんなどは、イベントが飯能市で開催されるタイミングにあわせて歓迎フラッグを用意して飾られたり、パネルを展示されています。地元の皆さんも、作品の認知度があがるにつて、積極的に応援されるようになったと思います」

 アニメの製作委員会が開催するオフィシャルなものから、ファンの有志によるイベントまで、市内でイベントが多数開催されたほか、作中で登場した天覧山など観光地へ、主に若い男性観光客が多く訪れるようになり、かなりの手応えを感じているとのこと。ただ、観光客が多数訪れるようになると、ゴミの投げ捨てやマナーの悪い観光客が出てきてしまい、地元住民からの批判を招きがち。

 また、『ヤマノススメ』は美少女4人が可愛く登山を楽しむという、非常に萌える作品だ。良かれと思って起用された萌えキャラクターが、一部からの反発を集めてしまうなど、美少女キャラに世間の風はときに強く吹く場合もある。飯能市ではそのあたりは大丈夫なのだろうか?

「市に、具体的なそういった声が届いたことはありません。個人的に飯能へ来てくれるファンの皆さんは、マナーがいい方が多いなという印象がありますし、市内の事業者の皆さんにヒアリングもしますが、『あの子たちはいい子が多いから、大事にしたほうがいい』と言われたり。たとえば山でペットボトルを捨てていった、みたいなお話を聞くこともほとんどないんです。作品を通じて、作品とあわせて飯能市のことも好きになってくれているのではないかなと思うと、本当にうれしいですね」

 なお、先述のとおり、飯能市では昨年度から「ふるさと納税」の返礼品に『ヤマノススメ』グッズを用意している。どれぐらいの反響があったのだろうか。

「種類を多数用意していますので、個々のグッズについては触れづらいんですが……全体的なことをいえば平成27年度のふるさと納税額は約397万円でした。それが『ヤマノススメ』グッズを取り扱い始めた28年度は、約1億6,700万円とざっくり42倍程度に増額するなど、『ヤマノススメ』グッズは相当な反響をいただきました。29年度も返礼品の公開当初からかなりの反響をいただいて、すでにかなりの数の申し込みをいただいています」

 飯能市内には童話『ムーミン』の原作者、トーベ・ヤンソンの名前を冠した、北欧の童話の世界をモチーフにした公園「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」が存在し、さらに19年春には『ムーミン』のテーマパーク「ムーミンバレーパーク」も開園予定とあって、『ムーミン』グッズも返礼品として用意されており人気が高いそうだが、それでも驚異的な伸びだ。

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