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成馬零一「ドラマ探訪記」

『わろてんか』に抱く物足りなさと葵わかなへの期待…歴代朝ドラと差別化のカギ

文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家
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 新しいNHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)が始まった。

 タイトルは『わろてんか』。吉本興業の創業者がモデルの藤岡てんを主人公にした、女の一代記だ。

 前クールに放送されていた『ひよっこ』が、朝ドラのセオリーからやや外れた普通の女の子の日常を描いたドラマだったのに対し、『わろてんか』は2011年の『カーネーション』以降に確立された、「女実業家を主人公にした戦前・戦中・戦後を舞台とした物語」という必勝フォーマットに忠実な作品だ。

『わろてんか』を左右する葵わかなの魅力

 朝ドラにはAK(NHK東京局制作)とBK(NHK大阪局制作)のものがあり、それぞれ4~9月期と10~3月期の作品で交互に制作されている。

 近年の話題作でいうと、AKが『ゲゲゲの女房』『あまちゃん』『花子とアン』『ひよっこ』、BKが『カーネーション』『ごちそうさん』『マッサン』『あさが来た』だ。

 最終的には制作スタッフ次第で、それぞれのカラーが統一されているわけではないが、大雑把な印象でいうと、AKのほうがポップで明るい意欲作が多く、BKのほうが重厚で物語を丁寧に積み重ねていく堅実な作品が多いように思う。

 その意味でいうと、『わろてんか』はいかにもBK的な作品だ。よくいえば安心して見られる。悪くいえば新味が感じられない、というのが第1週の印象である。

 出演者も、『てっぱん』の遠藤憲一、『梅ちゃん先生』の松坂桃李、『とと姉ちゃん』の大野拓朗といった過去作に登場した俳優が出演しており、「幼少期にヒロインが一生を左右する男性に出会う」というストーリー展開も、『あさが来た』を思わせる。

 テーマにしても、吉本興業の創業者を題材にするということ自体はおもしろいが、「日本の芸能史を描く」という試みは今のテレビドラマではあふれ返っていて、今やひとつのジャンルとして定着しているため新味はない。

 テレビ業界に貢献した俳優や脚本家だけが入居できる老人ホームを舞台にしたドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の成功で、朝ドラのライバルとなり得る帯ドラマ枠がテレビ朝日の昼ドラだ。同枠では、黒柳徹子の自伝を原作とする『トットちゃん!』が『わろてんか』と同時期にスタートしている。NHKでは、植木等とクレージーキャッツをフィーチャーした『植木等とのぼせもん』も放送中だ。

 とはいえ、ヒロインを演じる葵わかなが活躍するのは、まだまだこれからだ。なんだかんだいって、朝ドラの魅力はヒロインに左右される。逆にいえば、ヒロインさえよければすべてが魅力的に映るものだ。第1週の最後に登場した葵わかなのハツラツとした姿を見ていると、「そこは心配無用だ」と思った。

 そして、濱田岳、高橋一生といった実力派の俳優がこれから続々と出演する。そこに、吉本興業の創業にまつわる戦前・戦中の芸能裏話的な物語がからめば、見応えのあるドラマになるのではないかと思う。

カギを握る「“笑い”がテーマ」の意味

 おそらく、最終的に本作とほかの朝ドラの差別化のカギとなるのは、「笑い」というテーマをどのくらい突き詰められるかだろう。

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