のんの改名、ローラの“奴隷契約”の問題点

 事務所からの独立に際して、本名である「能年玲奈」を名乗れなくなったのんは、映画やアートの世界で活躍しているにもかかわらず、テレビで見る機会は激減した。

 あるトーク番組で、のんの出世作『あまちゃん』(NHK)の話題になり、ドラマの映像が流れたが、のんはワンカットも映っていなかった……それについて、同作の脚本家である宮藤官九郎が「あまちゃんは能年さんの主演作ですよ」と週刊誌上で嘆いていたこともあった。

「彼女が所属していたのはレプロエンタテインメントという事務所ですが、在籍時の肖像権をレプロが持っているので、彼女が辞めた辞めないに関係なく、『レプロがダメといったらダメ』ということになります。レプロが『辞めたタレントをうちが売る必要はないので、彼女の肖像の使用は了承しません』と言うのは、自由といえば自由なのです。

 そのため、それ自体は違法ではありませんが、そもそも肖像権が事務所側にすべて取り上げられてしまうような契約自体が問題です。彼女は名称使用権まで取り上げられて、本名であるにもかかわらず、芸能活動において『能年玲奈』と名乗ることは許されず、のんに改名せざるを得ませんでした。そういう契約形態が問題なのです。

 肖像権については、収益を分配すればいいのです。肖像を使えばお金が入ってくるはずのものを全面的に『ノー』と言うのは、経済合理性で考えれば不合理な話であり、個人的な感情のもつれで言っているとしか考えられません。辞めた後まで、当時の肖像権を事務所がすべて握っている。そんな契約自体がおかしいのです。

 ERAとしては、タレントと事務所の双方にとってフェアなかたちの標準契約書を作成・普及させていきたいと考えています。その標準契約書で契約を結んでもらうのが理想ですが、少なくとも、それを見てもらえば標準がわかるわけで、タレントが事務所から条件を提示されたときに判断する材料のひとつになればと考えています」(同)

「今、芸能界では、音事協(日本音楽事業者協会)の統一契約書をベースに、それを個々の事務所が改変して使っています。いずれも、タレントの権利をすべて吸い上げたり辞められないように縛ったりという、圧倒的に事務所有利な内容になっています」(河西氏)

 最近、ローラをめぐる“10年奴隷契約”についての報道もあったが、このケースでは、裁判所は10年間の契約を「有効」と認めるのだろうか。

「裁判所が10年間の契約を『有効』と認める可能性は、およそ考えられません。事務所はタレントに投資して、それを回収するビジネスモデルなので、契約に一定期間の拘束性を与えるということについては、裁判所も一定の理解を示す判決を出しています。

 しかしながら、通常は長くても2~3年で、10年という異例の長期間については裁判所も有効性を認める余地はないでしょう」(同)

 次回は、芸能界における労働組合の存在意義や公取委の今後の動きについて、さらに望月氏と河西氏の話をお伝えする。
(文=深笛義也/ライター)

※ERAは12月13日(水)にイベントを開催する。詳細は【12/13 ERA主催:第1回シンポジウム開催決定】「芸能界の光と闇(仮)」より

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