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豊田真由子が味わう「人間の本性むき出しの」ドブ板選挙…えげつない中傷&選挙妨害合戦

文=後藤豊/ノンフィクションライター
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美人を武器にする候補者の“驚愕テク”

 候補者が地元の支持団体をまわっていると、当然ながらウグイス嬢と2人きりになる。ウグイス嬢が美人女子大生だったりすると「若いコとドライブ気分」を楽しむこともできるようだ。

 しかし、なかには漢字が苦手なウグイス嬢もいるようで、「積極的売買を促進します」と言うところを「せっきょくてきばいしゅうをそくしんします」などとマイクで叫び、隣で聞いていた私は「そんなことをしたら、即パクられるよ」と大笑いしたこともあった。

 さて、向こうからライバル候補がやってきたときのこと。そのウグイス嬢は「○○候補のご健闘をお祈りします」などと心にもないセリフを吐いた直後、マイクのスイッチを入れたまま「今のオバさん(候補者)、すごい厚化粧ですね~」と運転中の私に話しかけてきた。タイミングが悪いことに、人が多い駅前の交差点で停車中。その瞬間に、数十票は失った。

 筆者のような応援者にも、ひそかな楽しみはある。若い美人のライバル候補が駅前で有権者と握手をしていたら、私も選挙用ジャンパーを脱いで支持者のふりをして握手する。選対本部の仲間のなかには、嫌がらせのために鼻をほじった手で握手する輩もいたようだ。

 しかし、敵もさるもの。胸元が開いたスーツでお辞儀をしたかと思いきや、握った手をさりげなく胸の近くに寄せてくれることもある。自分の“武器”を最大限に利用しているということだろう。

中傷ビラがばらまかれる選挙妨害の実態…

 選挙カーの運転を終えて選対本部に戻ると、食事が待っている。寿司や天ぷらなどが出た昔と違い、今は仕出し弁当だが……。また、選対本部には近所の暇なおじさんがやってくることもある。そして、その全員が支持者とは限らない。

 ライバル陣営に詳しいとなると、こちらは警戒する。なぜなら、ライバル陣営でもこちらの情報を話している可能性があるからだ。敵か味方かわからないものの、邪険にはできない。そのため、選対本部長から「(ライバル候補の)悪口禁止令」が出ることもある(ちなみに、このような“風見鶏”は地元の商店主であることが多い)。

 一番困るのは、どこからともなく現れる“怪しげな占いおばさん”だ。「明日は紫のネクタイをしろ」「神棚の方角を変えろ」などと言っているうちは笑顔で対応もするが、言うことを聞けば聞くほど調子に乗っていき、挙げ句の果てに「明日は15時に××市をまわりなさい」などと言ってくる。

 その占いおばさんが支持者などを紹介してくれるわけでもなく、単なる思い付きにすぎない。しかも、本当にその地域をまわったかどうかを確認するので手に負えない。

 また、選挙といえば妨害も付き物だ。あるとき、ライバル陣営がA先生の中傷ビラをせっせとまいていることが判明した。露骨な選挙妨害である。我々はA先生と支持者数名だけの“秘密会議”を開き、その選挙妨害を逆手に取る方法を話し合った。その結果、うまく逆利用することができ、A先生は当選してライバル候補は僅差で次点であった。

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