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「雑草系臨床心理士・杉山崇はこう考えます」

仲良しと評判の家族、なぜ父は妻子6人を焼き殺したのか?なぜ父による子殺しは多い? 

文=杉山崇/神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授、臨床心理士
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自尊心を傷つけた者は裏切り者になる

 
 では、何をもって心のなかで裏切り者と認定するのでしょうか。そのひとつが「期待に沿わないこと」です。人はそれぞれに都合があるので、常にお互いの期待に沿えるものではありません。そのために許し合えるシステムも獲得しています。しかし、進化の歴史的に攻撃性のほうがよりパワフルなので、心理的に疲れている状態では許し合いシステムが作動しにくくなるのです。

 人が人に期待するもののひとつに、「自分を尊重すること」があります。特に家族や親しい仲間に対してはこの期待が膨らみます。気が許せるという甘えもあって、期待がどんどん膨らんでいくのです。その結果、お互いに「自分を尊重しない=裏切った」と感じてしまい攻撃的になるのです。

許し合いシステムを維持するために

 
「許し合いシステム」は攻撃性を発動させない安全装置のようなものです。なぜこれが外れてしまったのでしょうか。もともと外れやすい性格があることも知られていますが、その多くは自分が蔑ろにされたことで心理的に疲れて思い詰めてしまう過程で外れます。遺産相続で仲が良かった兄弟がお互いに殺意を覚えたという話も珍しくありません。また、父親による子殺しは神話のなかでも題材になるくらい古い人間のテーマです。父子関係には安全装置を外させやすい何かがあるのでしょう。

 安全装置を維持する鍵は、相談できる人が身近にいることです。男性は相談しにくいことが知られていますが、男性も思い詰める前に気軽に相談できる社会をつくることが大切です。
(文=杉山崇/神奈川大学心理相談センター所長、人間科学部教授、臨床心理士)

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