TBS系の人気テレビドラマ『コウノドリ』シリーズ2の第1話が13日、放送された。
ペルソナ総合医療センターに勤務する産婦人科医の鴻鳥サクラ(綾野剛)は、耳が聞こえない妊婦・早見マナ(志田未来)を診察し、早見が出産、そしてその後の子育てに対して抱える不安を徐々に和らげていく。一方、四宮春樹(星野源)は、仕事で大きなプロジェクトの責任者を務めるキャリアウーマンの妊婦・佐野彩加 ( 高橋メアリージュン)を診察し、赤ちゃんの心臓に疾患があることを見つける。それを告げると、佐野はしきりに「いつから仕事に戻れるのか」を気にし、さらに夫も「僕も“手伝うから”大丈夫」と繰り返し、本気で佐野を心配していない様子に四宮は違和感を覚える。
結局、早見も佐野も無事出産して退院するが、佐野は疾患がある赤ちゃんと生活することに大きな不安を抱えたまま自宅に帰り、家で赤ちゃんと2人きりで心ここにあらずの状態になることも多く、少し様子がおかしい――。そんななか、鴻鳥が診察した妊婦・久保佐和子(土村芳)に子宮頚部腺ガンが見つかり、その事実を鴻鳥が久保に告げるところまでが放送された。
登場人物たちは全員そろって善人だ。そして、設備が十分ではない離島の病院で鴻鳥と荻島勝秀(佐々木蔵之介)が懸命に緊急手術をして若い妊婦の出産をやり遂げたり、耳が聞こえない夫婦が必死で出産に挑んだり、赤ちゃんに疾患があることを知り心が折れそうになりながらも出産したり――。つくり手側の“お涙頂戴”“感動商法”のオンパレードだと頭ではわかっていても、私はドラマを見ている約1時間、ずっと泣きっぱなしだった。
特に早見の出産シーンでは、耳が聞こえない早見のために医師や助産師たちが手話や筆談を駆使して必死に出産を成功させようと奮闘する姿、さらに迫真の志田の表情と演技は、もう素晴らしいとしかいいようがなく、見ているほうは涙腺崩壊状態だった。
真摯な問題提起
また、自ら責任者を務めるプロジェクトチームが忙しいなか、出産のために仕事を離れざるを得ない佐野が、部下から心ない言葉を浴びせられ、「会社の同僚に申し訳ない」という思いをいっぱいにして葛藤するシーンには、自らの経験を重ねて胸が詰まる思いがした視聴者も多いのではないだろうか。
そんな佐野の夫は結局、会社の事情で育児休暇を取得できず、佐野は疾患のある赤ちゃんの世話の大半を1人でこなさなければならなくなる。そんな状況を受けて、メディカルソーシャルワーカーの向井祥子(江口のりこ)は「誰かが育休取ると、その分しわ寄せがほかの人に行きますから」とつぶやき、新生児科部長の今橋貴之(大森南朋)は「制度はあっても、なかなか使うことができない。どうしたらいいのか……」と途方にくれる。
これだけ国や企業が「子育て支援」「男性も女性も育休取得推進」を掲げてはいるにもかかわらず、これが現実だということは、企業に務める人であれば誰もが知っている。そして、いつまでたっても佐野のような悩みを抱える女性は減らない。このドラマは、こうした現実をきちんと切り取り、日本が抱える深刻かつ根深い問題の提起をしていると感じた。
そんな真摯な姿勢を貫く『コウノドリ』は、第2話以降も見て絶対に損はないと、自信を持って勧められるドラマに仕上がっている。
(文=米倉奈津子/ライター)