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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

「所得連動型」奨学金の拡充で、高等教育負担の問題に対応せよ

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
「所得連動型」奨学金の拡充で、高等教育負担の問題に対応せよの画像1「Thinkstock」より

 教育予算の改革について、以下の記事があった。

・9月16日付日本経済新聞記事『教育費軽減 対象校を選別 政府案、社会貢献など指標化』

大学などに通う学生と親の教育費負担を軽くする構想について、政府内で対象となる大学を絞り込む案が浮上している。(略)政府の有識者会議である「人生100年時代構想会議」で来月から詳細な制度設計を議論し、年内に中間報告をまとめる。支援する大学の範囲や支援内容と並行し、多額の財源をどのように手当てするかも議論することにしており、政府・与党内では教育国債などの案が出ている。具体的な教育費の軽減策としては、返済不要の給付型奨学金を拡充したり、授業料の減免制度を広げたりといった案が検討課題だ。オーストラリアのHECS(高等教育拠出金制度)をモデルに学費の出世払い方式を新たに導入することも選択肢になっている。学生とその親の負担を国が公費(税)で肩代わりすることになるため、政府は厳しい審査基準を設けて対象の大学などを選別する。(以下、略)>

 上記の記事を含め、教育予算の改革にはいくつかの論点があり、以下で簡単な整理をしてみよう。

 まず、そもそも論として、「今なぜ、教育予算の改革が必要なのか」という視点を明確にする必要がある。たとえば、日本国憲法は「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」(第26条第1項)と定めており、低所得世帯の子どもで4年制大学に進学したいと思っているにもかかわらず、家庭環境が原因で進学できない実態があるとするならば問題であり、どのような国民も、高等教育を受けることができる機会均等を図ることは極めて重要である。

 この関係では、東京大学大学院教育学研究科/大学経営・政策研究センター「高校生の進路追跡調査/第1次報告書」(2007年)が参考となる。この報告書によると、年収が1000万円超の世帯における4年制大学進学率は62.4%である一方、年収が600万円~800万円の世帯では49.4%に低下し、年収が400万円以下の世代では31.4%にまで低下してしまう。

小黒一正/法政大学教授

小黒一正/法政大学教授

法政大学経済学部教授。1974年生まれ。


京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。


1997年 大蔵省(現財務省)入省後、大臣官房文書課法令審査官補、関税局監視課総括補佐、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。財務省財務総合政策研究所上席客員研究員、経済産業研究所コンサルティングフェロー。会計検査院特別調査職。日本財政学会理事、鹿島平和研究所理事、新時代戦略研究所理事、キャノングローバル戦略研究所主任研究員。専門は公共経済学。


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