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憲法改正と電通、国民投票の危険な欠陥…巧妙な情報操作でメディアと国民は改憲に傾く

文=黒薮哲哉/「メディア黒書」主宰者
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憲法改正と電通、国民投票の危険な欠陥…巧妙な情報操作でメディアと国民は改憲に傾くの画像1「Thinkstock」より

 10月10日に衆議院総選挙が公示された。今回の選挙の重要な争点のひとつに憲法9条の改正がある。与党だけではなく、野党の日本維新の会や希望の党も改憲の立場を打ち出しており、かりに改憲勢力が議席の3分の2を占めた場合、国会で改憲が発議される可能性が高い。その後、改憲の是非を問う憲法改正国民投票が実施される。

 しかし、国民投票には、ほとんど知られていない制度上の致命的欠陥がある。この問題について、新刊『メディアに操作される憲法改正国民投票』(岩波書店)を著した作家で、博報堂に18年在籍した経歴がある本間龍氏に尋ねた。

――ずばり、国民投票の何が問題なのでしょうか?

本間龍氏(以下、本間) 国民投票は国民投票法に基づいて実施されるわけですが、この法律には広報活動に関する規制がほとんど存在しないことです。公職選挙法では、たとえば夜8時を過ぎると選挙運動をしてはいけないとか、新聞に掲載できる広告の回数を5回に制限するとか、政見放送の時間を候補者に公平に配分するとか、公平な広報活動を保障するための細かいルールが定められています。ところが国民投票では、そういうルールはほとんどありません。そのため、資金さえあればテレビCMをどんどん流し、新聞広告を好きなだけ出稿することができます。また広報活動のための寄付金をどこから受けてもいいし、寄付額の上限もありません。経理明細の報告義務すらないのです。

 私が同書で訴えようとしているのは、改憲そのものの賛否ではなく、国民投票にこのような制度上の欠陥があるという点です。国民投票法をつくるために、超党派の国会議員が国民投票の先進国が多いヨーロッパを視察しました。しかし、失礼な言い方になりますが、一体、現地で何を学んできたのだろうかという疑問が湧いてきます。ヨーロッパでは、特にテレビCMについて厳しい規制があります。たとえばこれまで60回以上の国民投票を実施してきたイタリアでは、若干の例外はありますが、テレビのスポットCMは原則的に禁止されています。何度も国民投票を実施して、テレビCMの影響力の大きさを弊害として認識しているからです。新聞の意見広告についても、両陣営の出稿量を均等にしています。

 日本でも、国民投票法をつくる際にテレビCMを規制しようという意見もあったのですが、日本民間放送連盟(民放連)から「意見広告の取り扱いについては、放送事業者の自主・自律による取り組みに委ねられるべき」とのコメントが出され、結局、規制しないことになったのです。しかし、民放連は、その後、自主的な改善案を出していません。国民投票のテレビCM業務は、メディアにとって特需となるからでしょう。

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