
学校給食、老人施設給食、惣菜チェーンなどで食中毒が頻発し、死者まで出ています。こうしたなか、「保存料を使わないと食品が早く傷み、食中毒のリスクが高まる」との声が、添加物業界や一部の学者の間で高まっています。
これほど消費者を愚弄した話はありません。食品添加物で食中毒が防げるなら、日本から食中毒はとっくに姿を消しているはずです。ところが、多くの加工食品に保存料、殺菌剤、酸化防止剤、pH調整剤等の食品添加物が使用されているにもかかわらず、食中毒の件数、患者数は一向に減少しません。衛生状態が非常に悪かった戦後の食中毒件数、患者数と現在を比較すると、ほとんど差はありません。食中毒発生件数の統計をとりだした1952年の発生件数は1190件・患者数2万8320人、2016年は1360件・2万3090人です。
この事実は何を意味しているのでしょうか。保存料、殺菌剤などの食品添加物の使用が食中毒予防になっていないということです。
埼玉、群馬両県でフレッシュコーポレーションが運営する惣菜「でりしゃす」系列店において、ポテトサラダなどを食べた人が相次いで腸管出血性大腸菌O-157に感染し、3歳の女の子が死亡しました。「でりしゃす」も含め、市販されている惣菜のポテトサラダには保存のために添加物のグリシン、pH調整剤、酸化防止剤(V.C.=アスコルビン酸)が、間違いなく添加されています。
しかし、今、日本で猛威を振るっているO-157、ノロウイルス、サルモネラ菌を原因とする食中毒予防に対して、保存料はなんの効果もないのです。それどころか、殺菌剤を使用しているから食中毒は心配ないと油断し、コストのかかる食品製造工場の衛生管理はおざなりという食品メーカーが多いのが実態です。こうした油断や慢心があるから、いつまでたっても食中毒が減らないのです。
食中毒を防ぐために添加物が必要というまやかし
食品メーカーや添加物製造業者は、「保存料などの添加物は、食中毒を防ぐために必要不可欠」と、強調しています。
たとえば、発がん性が指摘されているため使用が問題視されている亜硝酸塩は、ほんの少しの血液でも反応してきれいなピンク色に染めます。そのため、ハムやソーセージなどの食肉加工品、明太子などの魚卵製品に発色剤として使われています。この添加物は、食品業界では“魔法のクスリ”といわれています。どんな粗悪な原料でも、若干の赤血球が残っていれば、一様にきれいな赤みがかったピンク色にするからです。ハムやソーセージ、明太子のあの赤い色は、亜硝酸塩の添加なくして出せません。