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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

韓国、米軍に韓国軍の指揮下入りを要求…在韓米軍撤退なら在韓邦人保護に支障も

文=渡邉哲也/経済評論家
韓国、米軍に韓国軍の指揮下入りを要求…在韓米軍撤退なら在韓邦人保護に支障もの画像1「国軍の日」の記念式典に出席する韓国の文在寅大統領(左)(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

 韓国の宋永武国防部長官が「戦時作戦統制権」(以下、戦作権)の返還について言及した。

 10月12日、宋氏は戦作権について「時期と条件に合わせて、早急な返還を目指す」と語った。そして、韓国国防部は「(戦作権返還後に)戦時連合作戦を指揮する『未来連合司令部』の編成案が、27、28日にソウルで開かれる韓米定例安保協議会で承認されるだろう」としている。

 戦作権とは、有事の際に軍部隊の作戦を指揮する権限であり、現在韓国の戦作権は米韓連合司令部が保有している。米韓連合司令部は司令官がアメリカ、副司令官が韓国という構成になっており、韓国軍の司令権限は実質的にアメリカが握っているというかたちだ。

 しかし、韓国は戦作権返還後に米韓連合司令部を解体し、新たに戦争指揮機構として未来連合司令部を発足するとしている。そして、未来連合司令部では、韓国軍の大将が司令官、米軍の将軍が副司令官を務めるという構成だ。

 これは、つまり「米軍は韓国軍の配下に置かれ、韓国人司令官の指示に従って活動しろ」という要求である。アメリカがこの要求を簡単にのむとは思えないが、韓国は28日までに承認させるつもりのようだ。

戦作権が返還されれば在韓米軍の撤退も

 戦作権の問題は、これまで何度も米韓間で議題に上がってきた。朝鮮戦争以降、韓国の統制権はアメリカが保有していたが、韓国の経済発展などにともない、その扱いについて議論が生まれた。

 1994年の金泳三政権下で平時の作戦統制権は返還されたが、戦作権はそのまま維持された。2006年、当時の盧武鉉大統領が訪米時に戦作権の返還を強く求め、アメリカが折れるかたちで「12年に返還する」ということで合意した。

 しかし、次に誕生した右派の李明博大統領は「返還されても運用できる能力がない」として、アメリカに延期を請願、受け入れたアメリカは15年末までの延期を認めた。

 その後、朴槿恵大統領もさらなる返還延期を求め、戦作権の返還は「20年代中盤」に再延期された。しかし、朴大統領の失脚にともなって誕生した文在寅大統領は、大統領選挙中から「戦作権の早期返還」をうたい続けている。

 このように、戦作権は米韓間で政治の道具として利用されてきた経緯がある。しかし、今回は具体的な計画が策定されている点が大きな違いだ。前述のように、韓国は戦作権の返還にともなって米韓連合司令部が廃止された後に、韓国主導の未来連合司令部をつくるとしている。

 しかし、米軍が韓国軍の指揮下に置かれるというのは、国際的な常識に鑑みても非現実的と言わざるを得ない。そして、戦作権が返還されれば将来的な在韓米軍撤退も視野に入ることになる。

 北朝鮮情勢が緊迫するなか、この韓国の要求は非常識という見方が強い。また、これは日本にとっても大きな影響を与える問題である。有事の際には在韓米軍が中心となって在韓邦人を保護することになっているが、この計画の実現性も危ぶまれかねないからだ。

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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