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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

税務調査で絶対に「疑われない」方法…元調査官が明かす

文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人
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異例な調査

 1週間後、2回目の調査には、前回の新人と別のベテランの調査官が来たそうです。さらに、そのベテランのほうは管轄の異なる税務署の職員でした。管轄の異なる税務署の職員が、たった1件の税務調査に連携してやってくるのは、かなり珍しいような気がします。地方の小規模な税務署であれば、そういうこともあるのかもしれません。ベテランのほうは、執拗に外注費について確認していました。

・何を外注するのか
・外注先は何件あるのか
・外注の振込口座、住所、電話番号

 おそらく、確定申告書に記載している外注費の相手先の名前を、税務署のシステムで検索したところ、該当者がいなかったのでしょう。架空外注費を想定しているか、外注先の方が無申告だと考えていると思われます。そこで、外注先の管轄の税務署の職員が来たのかもしれません。

 外注費の次は、研修費について確認されたそうです。研修費は年間200万円ほどで、ほかの経費と比べて多額でした。インターネット広告の塾があるそうで、そこへの支払いがメインでした。研修は、最新の検索エンジンの情報や、ウェブサイトへの集客方法についてで、研修の内容を説明すると、調査官たちは納得したようでした。おそらく、調査官は個人的な支出を想定していたのだと思います。しかし、研修の資料やAさんの説明から、正当な支払いであると判断したのでしょう。

 事業関連性が薄ければ、経費にはできません。このあたりは、調査対象者への聞き取りで概ね判断できます。事業関連性が薄ければ、説明も曖昧になり、少し質問すれば綻びが出ます。ほとんどの調査対象者が、自分でも個人的支出であるという認識を持っているからです。

 Aさんは、経費については合理的な説明を行い、収入もすべてディスクローズして、無事に調査を終えました。最後に調査官から褒められたそうです。領収証に番号を振り会計ソフトの備考に入力、その上でノートに1枚ずつ丁寧に貼り付け、圧倒的な見やすさだったことを調査官は褒めたそうです。丁寧な整理によって、間違いや個人的な支出はしていないだろうと判断されたのか、領収証はほとんど確認されなかったといいます。無事に調査が終わり、ほっと胸をなで下ろしたそうです。

 普段から書類を整理し、売り上げや経費を信義則に則って記帳していれば、税理士が立ち会わずとも税務調査で否認されることもなくなります。かといって、確定申告は税理士に頼んだほうがいいでしょう。コストとパフォーマンスを考慮して、必要なときには頼るという判断が必要です。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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