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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

田舎でのんびり親・祖父母のサポート受けて子育て!急増する孫ターンの「意外な落とし穴」

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
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「孫ターン」に潜むリスクその1:「介護」の問題

 そんな良いこと尽くしのような「孫ターン」だが、注意すべき点もある。

 まずひとつ目は「介護」の問題だ。祖父母がいくら元気といっても、高齢なことには変わりない。いずれ介護が必要になった場合どうするかをきちんと家族や親族で話し合っておくべきだ。とくに祖父母と同居している場合、孫世帯へ介護の負担が集中しやすい。

 厚生労働省が発表した「平成28年国民生活基礎調査の概況」によると、おもな介護者は、要介護者等と「同居」が58.7%で最も多い。次に「事業者」が13.0%と続くが、かなりの確率で同居親族が介護の担い手となるということだ。

 祖父母が要介護状態になった場合、介護サービスの事業者の選択や手続き、認知症や持病など医療に関すること、費用負担や資産管理など、祖父母の介護に関する“プロジェクトリーダー”を誰にするか、役割分担や責任の所在を明らかにしておかないと、トラブルの元となる。

 昨今では、介護と育児を同時に負担する「ダブルケア」や10~20代の若い世代が介護の担い手となる「ヤングケアラー」も大きな社会問題となっている。

「孫ターン」に潜むリスクその2:「相続」の問題

 そして、「孫ターン」に関するリスクには「相続」についての問題もある。具体的な事例を挙げて考えてみよう。

 たとえば、祖父母(80代)名義の自宅に、孫Aさん(30代)が家族と共に「孫ターン」したとしよう。祖父母にはAさんの父も含め、60代の3人の子ども(X男、Y子、Z男)がいるが、別居して他県に在住している。

 祖父母とAさん一家は仲良く暮らしていたが、ある日突然、祖父母が共に交通事故で亡くなってしまった。Aさんが住んでいる自宅も含め、祖父母の財産を相続する権利を有する相続人は、子どもであるX男さん、Y子さん、Z男さんの3人となる。

 生前、祖父母は「この家は、Aにもらってほしい」と言っていたが、相続人間で遺産分割の話がまとまらず、祖父母の自宅は売却することに。結局、Aさんは住む家を失ってしまった。

 このように、相続が発生した場合、孫は代襲相続(相続権がある子がすでに亡くなっていて、孫が存在する場合、 その孫に相続権があること)以外は、相続人とはならない。孫に財産を遺してやりたい、遺してほしいなどの希望があるのであれば、生前贈与を利用する、遺言を作成する、祖父母と養子縁組をするなどの対策を講じておくべきである。

「孫ターン」でなくても、少子・高齢社会の相続は、一世代前に分散した相続財産が、数少ない孫に集中してしまうリスクが問題視されている。このような相続において、相続不動産の管理や相続税の負担が孫にのしかかるというわけだ。

「孫ターン」もまずはトライアル移住でお試しを!

 祖父母にとって、「孫は目に入れても痛くない」と言うくらいだから、孫が「おじいちゃん、おばあちゃんと暮らしたい」と言えば、嫌とはいえないだろう。もちろん、若い世代と暮らすことで若返り効果も期待できる。その反面、価値観も生活スタイルも異なる世代で、ずっと離れていた家族が一緒に暮らすというのは大変な困難を伴うものである。

「孫ターン」をご検討の方は、通常の地方移住と同様に、トライアル的に一時移住してみるなど、慎重に行動することをお勧めしたい。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

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