すでに、欧米を中心に多くの大手投資銀行などが、IT企業や一般の企業などとコンソーシアム(2つ以上の組織が共通の目的のために形成する団体)を組み、価値が安定した独自の仮想通貨を開発して資金決済などにかかるコストの削減を実現しようとしている。フィンテック事業の育成とともに、従来の業務に従事してきた専門家へのニーズは低下する可能性がある。
無視できないブロックチェーンの影響
実際にブロックチェーンが実用化されていくと、かなりの銀行業務が人からシステムに置き換えられる可能性がある。それは、銀行のビジネスのしくみ=ビジネスモデルの変革ととらえるべきだろう。
たとえば、ATMあるいはインターネット上のポータルサイトで、振り込みやローンの返済、あるいは送金などが行われたとしよう。このデータをブロックチェーンに書きこむと、理論上、銀行全体で各支店レベルでのデータを同期化し、均質にデータを複数の端末で管理することが可能になる。メインサーバーを設置する現在のIT運用のように1カ所にデータを集めて管理する必要はなく、人手もコストも削減できる。
突き詰めて考えると、銀行の支店業務の大半がネットワークによって遂行される日が到来する可能性がある。貸出しに関しても、“クラウドファンディング”のようにネット上で不特定多数の人が企業やプロジェクトに対して資金を貸し付けることが増えてきた。事務の分野でも、システムが業務の処理を行う分野が増えていくだろう。
このように考えると、支店で預金を集め、それを貸出しや有価証券の運用に回すというわが国の銀行のビジネスモデルは環境の変化にうまく対応することができてこなかったといえる。多くの銀行が投資信託の販売を中心とする“手数料ビジネス”を重視しているのは、既存のビジネスモデルが収益を獲得する力を低下させてきたことの裏返しだろう。
より普遍的に考えると、ブロックチェーンの実用化が進むにつれて、今後のビジネスはルーティーン作業の大半が人ではなく、システムによって遂行されていく可能性がある。それは、中間管理職を必要としない組織であると考えることもできる。中間管理職を必要としない組織が出来上がれば、多くの人がそれまでの業務を行う必要性は低下するはずだ。