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富家孝「危ない医療」

ブラック病院網の衝撃の実態…不必要な手術を繰り返し報酬稼ぎ、2週間ごとに転院

文=富家孝/医師、ジャーナリスト
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 現在の診療報酬制度では、入院期間が長引くと、その分だけ診療報酬が減算される。一般病棟の場合、入院基本料は「7対1」「10対1」「13対1」「15対1」の4つのランクがあり、それぞれ診療報酬の点数が異なる。「7対1」というのは、患者7人に対して看護師を常時1人配置するということ。このシステムが一番診療報酬が高いが、その場合、次のような計算になっている。

・基本点数は1591点=1万5910円
・入院14日までは2041点=2万410円
・同15日~30日が1783点=1万7830円
・同31日~89日が1591点=1万5910円

 つまり、長く入院してもらうほど病院は儲けが減るのだ。そこで、入院患者には病状が回復したらできるだけ早く退院してもらい、新しい患者を受け入れる。これは全国の病院のどこでも行われていることだが、生活保護受給者の認定病院だと、露骨にこれをやる。

 つまり、患者を2週間ごとに転院させ、その間に複数の病院で診療報酬を稼ぐ。次の病院に行けば、患者の入院日数はリセットされ、また1日目から診療報酬が計算される。こうした、ブラック病院のネットワークはいくつか存在し、そのなかで生活保護受給者は病院をぐるぐる回っているというわけである。

必要のない手術をして診療報酬を稼ぐ

 このような生活保護受給者ビジネスは暴力団が絡んでおり、患者をまとめて紹介してリベートを稼ぐ、あるいは病院と生活保護受給者がグルになって山分けする、さらに生活保護受給者支援団体が間に入って手数料を抜いていくなど、いろいろなパターンがある。

 世間が一番衝撃を受けたのは、2009年に摘発された、いわゆる「山本病院事件」と言われる診療報酬不正請求事件だろう。山本病院は奈良県大和郡山市にあった病床数が80床規模の病院で、心臓血管外科や循環器科、脳神経外科、内科などの診療科を掲げていたが、生活保護受給者を連れて来ては必要のない手術をして診療報酬を稼いでいたのである。

 たとえば、肝臓がんでない生活保護受給者を肝臓がんということに仕立て上げ手術を施す。また、必要もないのに心筋梗塞を防ぐという名目で心臓カテーテル手術を施していた。そうして手術を施された生活保護受給者は、なんと140人にも上った。心臓カテーテル手術というのは、血管内の75%以上が詰まっていると治療対象になる。しかし、当時の警察の捜査によると、詰まっていたなどという患者はほとんどおらず、せいぜい50%止まり。ところが、カルテにはみな「90%」「99%」と書かれていたという。

 このようなブラック病院は、現行の生活保護制度の内容が変わらない限り、なくならないだろう。国は制度改正を考えているが、今のところ名案はない。

 ぐるぐる病院は、何も生活保護受給者だけの話ではない。高齢社会が進み、入院患者が増えるにしたがい、どの病院も“ぐるぐる化”していくのは間違いない。
(文=富家孝/医師、ジャーナリスト)

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