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業務停止処分のアディーレ、存亡の危機…石丸元代表に逮捕歴の「恥ずかしい過去」

文=編集部
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業務停止処分のアディーレ、存亡の危機…石丸元代表に逮捕歴の「恥ずかしい過去」の画像1アディーレ法律事務所のHPより

 飛ぶ鳥を落とす勢いだったアディーレ法律事務所(東京・豊島区)の創立者・石丸幸人弁護士(45)が“挫折”した。

 東京弁護士会は10月11日、事実と異なる宣伝を繰り返したとして、アディーレを業務停止2カ月、元代表の石丸氏に業務停止3カ月の懲戒処分を科した。期間中は本店と全国80以上の支店で業務を禁じられる。アディーレ側は「景品表示法違反の事実があったことをもって法律事務所の存亡に関わる業務停止処分を受けることは、行為と処分の均衡を欠く」とコメント。アディーレは日本弁護士連合会(日弁連)に処分取り消しを求めて審査請求を申し立てた。

 アディーレといえば、お笑い芸人のブラックマヨネーズを起用した過払い金返還のCMでお馴染み。「過払い金の返還。あなたも対象かもしれません。着手金無料! 成功報酬制! お電話ください」というCMを見たことがある人も多いだろう。

 今回問題視されたのはインターネット上に2010年10月以降、掲載した広告だ。期間限定で過払い金返還請求の着手金を無料または割引にするなどとするキャンペーンを繰り返してきたが、実際には5年近く同様のサービスを続けていた。広告掲載はすべて石丸氏の指示・承認を受けて実施された、と東京弁護士会は認定した。

 消費者庁は16年2月、景品表示法違反(有利誤認)に当たるとして、こうした表示をしないよう求める措置命令を出した。アディーレは弁護士自治の原則を超えて、弁護士会以外の行政庁による行政処分を受けた日本で唯一の法律事務所となった。

 東京弁護士会を含む3つの弁護士会の綱紀委員会は17年4月、アディーレと石丸氏らを「懲戒審査相当」と議決。これを受け、東京弁護士会は同法違反と品位を失う非行があったとして、弁護士法違反と認定。2カ月の業務停止処分にした。

 この問題で、東京弁護士会の臨時相談窓口に問い合わせが殺到するなど波紋が広がっている。石丸氏以外の所属弁護士が依頼者と委託契約を結び直し、裁判などを続けることは可能だが、業務停止という弁護士事務所としては「死刑判決」に等しい処分を受けたアディーレは存亡に関わる深刻な事態に見舞われた。日弁連の定める基準では、業務停止期間が1カ月を超える場合、依頼者との委任契約をすべて解除しなければならない決まりになっている。アディーレが顧客に契約解除を通知する書面を送っていることから、東京弁護士会の相談窓口には3000件以上の相談が寄せられているとのことだ。

 アディーレは契約解除通知のなかで、今後について、依頼者本人が対応するか新たに他の弁護士に委任するかを求めている。ほかにはアディーレの所属弁護士個人に委任する方法があることを伝えている。石丸氏はすでにアディーレの代表を辞任している。

酒気帯び運転で逮捕歴

 石丸氏は法曹界の異端児である。弁護士の世界にコンビニエンスストアやファストフード店のようなチェーン理論を持ち込んだ最初の人物だ。アディーレは全都道府県に86拠点を展開。従業員1000人以上、うち弁護士は187人、司法書士7人を擁する(17年9月末時点)。

 国内の法律事務所は西村あさひ法律事務所を筆頭に、アンダーソン・毛利・友常法律事務所、森・濱田松本法律事務所、長島・大野・常松法律事務所、TMI総合法律事務所を「5大事務所」という。アディーレは国内6位の規模を誇る。消費者金融の過払い事件をきっかけに急成長してきた。

 石丸氏は1972年生まれ。北海道室蘭市出身。1995年に横浜国立大学第二経営学部卒業、ゲーム機のセガ・エンタープライゼス(現・セガホールディングス)に入社し、系列のゲームセンターの副店長となる。東京勤務を希望していたが北海道の帯広勤務を命じられた。入社10カ月でクビになった。

 石丸氏は月刊誌「サイゾー」(2007年10月号)で「イケメン弁護士が過激告白 逮捕歴とテレビに出る訳」と吐露している。

「帯広に行かされて自暴自棄になってしまい、酒気帯び運転で3回捕まったんですね。それで逮捕・起訴されて、最終的に懲役9カ月執行猶予4年という処分となり、セガも解雇された」(同誌より)

 セガを退社後、技術支援会社フューチャー・テクノロジー、中高年就業支援会社パソナソフトバンク(現・ランスタッド)と転職を重ねた。

「(勤めた先は)徹底した成果主義だったんです。そんな風土が肌に合っていたのか、自分も独立して勝負したいと思うようになりました。そのとき、どのジャンルにしようかと考えた結果、たどり着いたのが弁護士だったんですよね」(同)

 では、なぜ弁護士なら成功できると考えたのか。

「この業界の人たちは職人的な人が多くて、ビジネスセンスがある人が少ない。だから参入障壁の中に入って、普通の会社が普通にやっていることをやるだけで、ある程度の成果が出るんじゃないかと思ったわけです」(同)

 猛勉強して2001年、29歳で司法試験に合格。司法修習56期となる。03年に東京弁護士会に弁護士登録。都内大手法律事務所を経て、04年にアディーレを設立した。アディーレはラテン語で「身近な」という意味。身近な弁護士になる想いを込めた。石丸氏は翌年に法人化した法律事務所の代表弁護士に就任した。

ビジネスモデル

 弁護士の仕事は、かなりの部分がオーダーメイドである。そこで、弁護士しかできない仕事と、事務スタッフと司法書士にもできる仕事を完全に分けて、ひとつの案件を分業して処理するシステムを取り入れた。そして、各都道府県にフランチャイズ方式のようにして支店をつくっていった。

 知名度を上げるために広報活動が欠かせない。『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)に出たのを皮切りにテレビに出演し、売れっ子弁護士となる。法律事務所として珍しく大々的にテレビCMを仕掛け、有名になった。依頼者は9万人にも及んでいた。

 石丸氏は弁護士というよりビジネスのリーダー。法律の番人を自負する伝統的な弁護士たちの目には「弁護士のなんたるかをわきまえない異端児」と映ったことだろう。

 今回の処分を「出る杭は打たれる」と受け取る向きもある。「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/17年2月4日号)の記事『貸金業法改正から10年 当世カネ貸し事情』によれば、石丸氏は医師資格の取得を目指して北里大学の医学部に通学中とのこと。弁護士稼業にさほど魅力を感じていないのかもしれない。

 過払い金の請求期間の時効消滅は10年。ドル箱だった過払い事件が激減する。石丸氏は医師になって病院チェーンの経営を目指すのだろうか。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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