具体的に「妖精の粉」のつくり方を紹介しておこう。まず、豚の膀胱を切り開いて平らに伸ばし、筋肉の層を削り取る。次に、残ったコラーゲン豊富な組織を酸の中で揺すって洗う。そして、紙状の細胞外マトリックスを乾燥させて、粉状にすり潰す。リーは、この粉末を定期的に指先に振りかけることを続けたところ、数週間で指先は本来の長さに成長し、爪や指紋もみごとに再生したのだった。

 哺乳類の指のような四肢は、程度によっては自然治癒によって再生されることはあったとしても、基本的にサンショウウオの四肢のようには再生されない。また、肝臓のような臓器のように再生されることもない。指先は、皮膚、脂肪、結合組織、骨、腱、神経、血管など、複雑な構造をしているのだ。だからこそ、再生医療の発展は急務であると同時に注目されている。

 特に、アメリカ陸軍はこの分野の研究に力を注いできた。四肢を失うなど、負傷した兵士の治療は優先順位が高いからである。そこで、アメリカ陸軍は「妖精の粉」を開発したピッツバーグ大学のスティーヴン・バディラック博士による再生医学に投資してきたのである。

「妖精の粉」は、細胞外マトリックス(ECM)の加工品であり、実際のところ、同様のものはいくつもの研究機関がつくり出している。専門家に言わせれば、決して魔法の万能薬ではないものの、その有効性は知られてきたものである。

 外傷部や内部組織の断裂をつなぐために使用すると、触媒として機能して、体細胞の成長を促すのだ。細胞足場の上で成長するとともに、それはゆっくりと体内に吸収・代謝されてゆき、通常組織の生成と治癒を早める。それは実際に髄から幹細胞を引き寄せ、それらの幹細胞は、少なくとも部分的には迅速でより完全な治癒をもたらすという。

 これまでに、シンプルな外傷だけでなく、食道、鼓膜、ヘルニア、嚢、整形外科に関わる手術において効果を発揮しており、皮膚、靱帯、筋肉組織の断裂の治癒にも役立っている。バディラック博士は、2008年にその詳細を「ポップ・テック」誌で報告している。

超音波による骨の再生

 
 リー・スピーヴァック氏のケースでは、骨まで失っていなかった。我々は骨折しても再びつなぎ合わせる能力は備えているが、骨を大きく欠いてしまった場合、それを再生することはできない。それが可能となれば、再生医学は大きく発展する可能性がある。
 
 実は、そんな骨の再生が、歯や顎の骨においてはすでに成功している。

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