詐欺罪で逮捕、てるみくらぶ社長がやっていた「トンデモナイこと」…国家の意思で逮捕か

「てるみくらぶ」山田千賀子社長(読売新聞/アフロ)

 今年3月に経営破綻した旅行会社「てるみくらぶ」が、銀行から現金約2億円をだまし取ったとして、今日(8日)、山田千賀子社長が詐欺罪で逮捕されました。有罪なら、10年以下の懲役刑となります。

 しかし、だまされたとはいえ、銀行がただで2億円をてるみくらぶにプレゼントすることはあり得ないので、もちろん「借りた」わけです。そして、「借りた」ということは「返す」ことが必要です。このように、「金を借りた後に破産などして返せなくなった」場合に詐欺罪が成立してしまうなら、世の中の会社経営者はガクガクブルブルです。

 では今回、なぜ山田氏は詐欺罪で逮捕されたのかを検証します。

 詐欺罪は人をだまして金銭を交付させたり、有料のサービスを受けたりする場合に成立するのですが、詐欺罪の成立には「人をだます」という行為があるかないかが重要となります。

 たとえば、銀行の窓口に置いてある誰かの札束を、行員が目を離した隙にとる行為は「人をだます」がないので詐欺罪ではありません(もちろん、窃盗罪にはなります)。また、レストランで食事をした後にお金を持ってないことに気づいて、黙ってこっそり逃げることも詐欺罪ではありません(実はなんの犯罪も成立しません)。また、ATMで機械を違法に操作して現金をとっても、「人をだます」ではないので詐欺罪ではありません(もちろん、別の犯罪が成立します)。

 今回の場合、「銀行の担当者をだます」という行為が必要となるのですが、ここでは、「借りる時に、返せる当てがないのに『返せる』とだまして借りた」行為が問題となります。

 たとえば、報道されているように、本当は破綻寸前なのに、「会社の財務状況は良好である」という虚偽の書類を作成して提出する行為が、「返せる当てがないのに、返せるとだました」となるわけです。

 おそらく、山田社長は会社の経営状況を把握していたのに、返せる当てがないことを知りながらバラ色の経営状況を説明し、融資を取り付けたのでしょう。これが犯罪にならないなら、トンデモナイことです。

 というわけで、「借りる時に返せる当てがあったかどうか」「返せる当てがないことを知っていたか」が、詐欺罪の成立を分ける基準です。世の中の経営者の皆さん、ホッとしてください。

 なお、今回の詐欺罪での立件は、個々の旅行者の被害については、法律上は犯罪が成立するとしても、捜査の都合で一つひとつを立件できないので、大きいところで逮捕して処罰しよう、という国の意思の表れではないでしょうか。

 私は弁護士ですが、とても山口社長の弁護はしたくないですね。「依頼者はだますつもりはなかったんです!」などと、被害者を逆撫でするような弁護活動はとてもできません。
(文=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士

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