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渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」

クエン酸の疲労軽減効果、国の研究所が否定…「有効性のデータない」

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト

 疲労感の度合いは、VAS検査によって判定されました。VAS検査とは、もともとは痛みを調べるための検査方法で、10cmの線を引き、左端が「痛みなし」、右端が「今まで経験した最高の痛み」とした場合、被験者の現在の痛みがどの程度かを線上に記入してもらうというもの。今回の研究では「痛み」を「疲労感」に換えて、自分で記入してもらったわけです。

 同文献によると、その結果、「全体的疲労感では、プラセボ群、被験食群とも、摂取前値と比較して摂取終了時のほうが低い値、すなわち疲労感の改善を示し(プラセボ群:摂取前4.1±1.8→摂取後3.8±1.4、被験食群:4.4±1.7→3.6±1.6)、摂取した行為に基づくプラセボ効果が検出された。さらに被験食群では、全体的疲労感の摂取前後の変化量(疲労感改善度)において、プラセボ群よりもさらに高い改善傾向のあることが示され(プラセボ群-0.3±1.0、被験食群-0.8±1.1、p=0.090)、被験食がプラセボ効果をさらに上回る疲労感改善効果のあることが示唆された。同様の傾向は、精神的疲労感の評価項目においても認められた」とのことです。

 ここにある「4.1」や「3.8」などの数値は、VAS検査で被験者が左端から何cmに記入したかを示しており、数値が低いほど左端に近く、疲労感が少ないということです。

クエン酸を摂取すると運動量が低下?

 ところが、前出の「『健康食品』の安全性・有効性情報」では、この文献について、「疲労に関する自覚評価において12項目中1項目(退屈度)で減少が認められたものの、その他の11項目(全体的疲労感、精神的疲労感、身体的疲労感、自覚的ストレスなど)や生理学的検査で影響は認められなかった」と、否定的な評価を下しています。

 この文献のデータを見る限り、精神的疲労感については、被験食群がプラセボ群に比べて疲労感の度合いが減っているといえます。しかし、身体的疲労感については、被験食群とプラセボ群とでは、ほとんど差は見られません。全体的疲労感では、被験食群がプラセボ群より疲労感の度合いが減ってはいますが、明らかな差といえるのかは疑問です。

 ほかにも、クエン酸の効果を示す文献があります。それは、前出の医学専門誌の同じ号に掲載されている「レモンクエン酸の疲労感軽減効果 -疲労感を自覚する625名を解析対象としたプラセボ対照WEB調査-」で、研究グループも同じです。

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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