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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

電波利用料の巨大利権…テレビ局は携帯キャリアの11分の1

文=渡邉哲也/経済評論家

 NHKの収入の95%を占める受信料は6769億円(2016年度決算)で、3年連続で過去最高を更新した。しかし、その価格や徴収方法が物議を醸すことも多く、今は公共放送としてのNHKのあり方自体が問題視されている。

 これを機に、NHKが保有する4枠の周波数帯のうち2枠を開放させるのは、どうだろうか。そして、放送施設や電波塔などのインフラ部分と制作部分を分離し、インフラ部分については公有化する。つまり、お金を払えば誰でも使える仕組みにするわけだ。

 今、民放の地方局のなかには、4K放送に対応するためのコストを捻出できないような局もあるが、彼らにとっては渡りに船となる。NHKのインフラを借り受けて使うことで、民放は設備投資を大幅に削減することができるからだ。

 12月には、NHKとの受信契約を定める放送法の合憲性について、初めて最高裁判所の判決が下されることになっている。本来であれば、事業者と契約するかどうかの判断は個人の自由だ。しかし、実際には、税金でもないのにNHKの受信料は半ば強制的に徴収される仕組みができあがっている。これは違憲なのか、合憲なのか。仮に最高裁で「違憲」と判断されれば、今後はNHK民営化の議論が一気に加速することになるだろう。

排他的な「記者クラブ」崩壊の可能性も

 また、設備投資の問題が解消されれば新規参入が容易になると同時に、記者クラブという制度の崩壊にもつながる可能性がある。

 官公庁などに設けられている記者クラブでは、記者個人ではなく所属する企業(メディア)に対して加盟を認めている。これはメディアの固定化であり、実質的に新規参入を阻害する排他的な仕組みだ。電波オークションによって新規参入が容易になれば、こうした体質も変わらざるを得ないだろう。

 いずれにせよ、安すぎる電波利用料と電波オークションの議論が進まない状況を放置してきた事実は、「放送利権の塊」といわれても仕方のないところだ。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

【※1】
平成28年度 主な無線局免許人の電波利用料負担額」(電波利用ホームページ)

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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