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関電と大阪ガス、相互参入で客が大量流出し合い

文=編集部
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関電と大阪ガス、相互参入で客が大量流出し合いの画像1大阪ガス本社(「Wikipedia」より)

 近畿26万448件、関東10万2812件、中部・北陸7万5647件、九州・沖縄4万4600件、合計48万3507件――。これは10月31日時点の都市ガスの契約先切り替え(スイッチング)件数だ(資源エネルギー庁調べ)。

 近畿は関西電力が家庭向けガス市場に参入し、全国のガス切り替え件数の半数以上を占める激戦区となった。大阪ガスから関西電力への切り替えが頭抜けて多い。切り替え件数は東京ガスから東京電力への2.9倍、東邦ガスから中部電力への3.5倍だ。

 都市ガスは17年4月に小売りが自由化された。電力は異業種から多数参入があったが、ガスは保安検査がハードルとなり、電力以外に異業種からの参入はない。「電力vs.ガス」の一騎打ちとなった。

 関西では大ガスと関電が激烈な値下げ合戦を繰り広げた。都市ガスの全面自由化に向けて、大ガスは家庭向けガス料金を従来の体系より最大7.5%割り引く料金プランを打ち出した。

 一方、関電は電気とセットで契約すればガス料金を大ガスより最大で8%安くした。ただ、大ガスは電力に参入しており、電気料金が関電より5%ほど安いため、ガスと電力をセットで契約すれば大ガスのほうが割安になる計算だ。

 16年4月、電力の小売り自由化が始まり、首都圏、関西、中部で新電力が多くの契約を獲得。17年3月時点で東京では顧客の7%、関西では6%が契約先を変更した。関電からは90万件の顧客が流出し、このうち39万件を大ガスが獲得した。

 ところが、都市ガスの小売り自由化で攻守所を変えた。関電は電力とガスの割安なセット割引を武器に、700万件の顧客を持つ大ガスの牙城に攻め入った。

 当初、関電はガスの家庭向け販売で初年度に20万件の契約獲得を目指したが、自由化開始から4カ月で20万件をあっさり突破。焦った大ガスは首都圏に進出して巻き返しを図る。

大ガスの首都圏進出は関西での流出分を補うため

 大ガスは首都圏のガス事業に参入する。東京電力ホールディングス、JXTGホールディングスと組み、ガス製造事業の新会社を設立する。大ガスは将来的に首都圏での都市ガス卸・小売り販売を視野に入れている。

 3社がつくる新会社が都市ガスを製造する設備を新設して運用する。東電が69%、JXTGが16%、大ガスが15%を出資する。総投資額は100億円前後とみられ、2020年の稼働を目指す。

 4月のガス小売りの全面自由化以降、都市ガス会社が従来のエリアを越えて事業を拡大するのは大ガスが初めてとなる。

 大ガスは電力でも首都圏での事業展開を計画している。16年10月に石油資源開発(JAPEX)と三井物産が進める福島県の天然ガス発電事業に参画した。

 大ガスと中部電力は、18年春にも首都圏で電力とガスを販売する新会社を設立する方向と報じられた。中部電も首都圏の電力の販売に参入して、首都圏で20万件の新規顧客の獲得を目標に掲げたが、11万件にとどまっている。巻き返しを図るべく、中部電と大ガスはタッグを組んだ。需要が多い首都圏で収益の拡大を狙う。

 関電も手をこまねいて見ているわけではなく、首都圏で攻勢をかける。10月31日、オリックスの子会社でマンション向け電力販売を手掛けるオリックス電力を買収した。オリックスが実施した入札には大ガスや東電なども応札したが、関電の提示額が175億円ともっとも高かった。

 関電は昨年7月、首都圏で家庭向け電力の販売を始めた。18年度末までに10万件の契約獲得を目指したが、1万5000件にとどまる。6万3000件の顧客を抱えるオリックス電力を買収することで、10万件達成が射程圏内に入る。

 関電と大ガスが首都圏で事業を拡大するのは、地元で苦戦が続いているからだ。関電は新電力に90万件の顧客を奪われ、一方の大ガスは関電に20万件を持っていかれた。

 電力とガスの相互乗り入れを可能にした完全自由化は、地域をまたいだ販売競争を過熱させている。
(文=編集部)

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