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「平行世界」から飛び移ってきた女性の超常体験談

文=水守啓/サイエンスライター
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「平行世界」から飛び移ってきた女性の超常体験談の画像1「Thinkstock」より

望まれざる超常体験

 世の中には、摩訶不思議な体験をする人々がいる。それらの多くは、いわゆる超常現象とされ、科学的な説明は困難だが、多くの場合、ときどき見られる典型的な現象として分類され得る。たとえば、UFOアブダクション、ポルターガイスト現象、心霊現象、テレパシーやESP(超感覚的知覚)といった超能力現象などである。時に、UFOに搭乗して宇宙人の母星を訪問したり、地底人の暮らす地下都市を訪問したとする人々もいる。また、近年増加傾向にあるが、物理的な体験は伴っていなくとも、チャネリング(霊的交信)を通じて宇宙人や地底人と接触する人々もいる。

 これらは、本人にとっては確かに衝撃的な出来事かもしれないが、それほど目新しい話ではない。特に、何者かとの接触のように、相手あっての出来事の場合、科学的な説明は無理でも、自分に何が起こったのか、何らかのかたちで推測し、現実を受け入れることができる。時にトラウマを抱え込むことになろうとも、他者と過去を共有できる世界で暮らし、同様の体験者を見つけ出せることはいくらか救いとなる。

 一方、ある時点から他者と過去を共有できなくなるケースがある。特別、恐ろしい存在と出くわしたわけでも記憶喪失に陥ったわけでもないものの、それまで知っていた世界がなくなり、異なる世界を受け入れて生きていかねばならないケースである。

 そんな体験をしたとする女性がスペインにいる。そして、彼女は2008年7月16日、インターネット・コミュニティーを通じて自分の5カ月前の体験を告白し、次のように助けを求めたのである。

<もし、同じような体験をした人がいたら、どうか私に連絡してください。医者は説明できませんでしたが、私は自分に何が起こったのかを知りたいのです。

 最近5カ月間、私はネット上で見つけたさまざまな理論に目を通してきましたが、「代替現実」に飛び込んでしまったのだと確信しています。私が行った何らかの行為が自分の現実を変えてしまったに違いないと思っています。

 もし、私が平行宇宙にジャンプしてきたのであれば、なぜ私は同じ年(時間軸)で暮らしているのでしょう? 人生において、わずかな違いを除いて、私は同じ人物に留まっています。

 自分のことをわかりやすく説明するなら、直近5カ月間の人生を失ったようなものです(それ以前の自分が本当の自分だった)。すべてはただの夢で、自分以外のすべての人々はこの5カ月間の記憶を持っている。そして、その期間に私が行ったことを、私だけ記憶していないようなものです。

 どうか茶化すのではなく、真実を教えてください。これは私にとってはとても真剣なことなのです>

 この悲痛なメッセージは、複数の宇宙が同時存在する可能性を論じた記事に対する反応(レス)として書き込まれたもので、彼女の名前がわかるメールアドレスが添えられていた。この出来事は、最近になって注目されつつあるのだが、彼女にそんな投稿をさせるに至った体験を以下に紹介していくことにしよう。

部分的に過去を失った女性

 08年7月から遡ること5カ月、当時41歳のレリナ・ガルシア・ゴードーさんは、朝目覚めると、自分が異なる色のシーツが敷かれたベッドの中にいたのに気づいた。まったく説明のつかないことで、レリナ(以下敬称略)は動揺した。

 だが、ともかく過去20年ほど勤めてきた会社に行くことにした。自分の車は前夜に停めた場所にあった。車に乗り込んだレリナは、7年前に今のアパートに引っ越してきて以来、走り慣れたルートを運転して通勤した。彼女にとって、ベッドのシーツ以外、すべては正常のようだった。

 レリナが職場のあるビルに到着すると、中には見知らぬ人々が何人かいたが、気に留めずに自分のオフィスへと向かった。ところが、オフィスのドアには自分ではなく別人の名前が書かれたタグが付いていた。階を間違えたかと思って確認したが、そんなことはなかった。レリナは混乱した。誰も教えてくれずに、自分はクビになっていたのだろうか? 過去20年間、誠実に勤めてきたにもかかわらず。

 レリナはノートパソコンを取り出し、会社のネットワークに無線でアクセスしてみた。すると、自分の名前はなおも会社の名簿に載っていたが、まったく異なる部署に属し、経営者も変わっていた。彼女によると、そのボスはぱっとしなかった。

 すぐにレリナは自分のクレジットカード、運転免許証、職場のIDをチェックした。氏名、顔写真、番号、住所など、すべて正しい情報が記されていた。だが、彼女は病欠を取り、医者に行くことにした。そして、さまざまな検査が行われたが、体内にアルコールもドラッグも検出されず、なんの異常も見られなかった。

 レリナは自分のアパートに戻り、念のため、個人情報の記された銀行の通帳や請求書などをチェックしてみたが、すべて正しい情報が記されていた。

 自分は記憶喪失に陥っているのだろうか? 自分に何かが起こって、人生の一部を思い出せないのだろうか?

 レリナはインターネットにアクセスした。自分が前夜に見たニュースを再び確認できたため、失われた日々があるわけではなかった。レリナには7年間付き合ってきた彼氏がいたが、別れてから6カ月が経過していた。そして、最近では近所で暮らす新しい男性アグスティンとデートを始めていた。2人はわずかに4カ月間デートを重ねてきただけであったが、レリナは彼のことを良く知っていた。そこで、レリナは彼に電話をしてみたところ、出たのは別人だった。アグスティンのことを聞いてみても、まったく心当たりはないとのことだった。レリナはショックを受けた。彼女はアグスティンの息子にも会い、真剣に交際を始めた矢先だったからである。

 翌日から、レリナは通勤し、自分がそれまで通りその部署で働いてきたかのように振る舞った。そして、日々が経過していくにつれて、少しずつだが、何かが確実に変わってしまったことを実感するようになっていった。自宅のクローゼットや引き出しの中には、買った覚えのない服があり、過去に投稿を行ったブログ記事も消えていた。Eメールやチャットの内容も保存されていなかった。だが、ニュースサイトやブログを閲覧すると、世界はそのままで変わっていなかった。

 レリナは探偵を雇ってアグスティンについて調べてもらったが、彼女の暮らす町に彼の形跡は何も見つからなかった。また、それ以前に付き合っていた彼氏も、存在した形跡すら見つけ出すことができなかった。

 特に衝撃を受けたのは、レリナの家族の対応だった。レリナには肩を手術した妹がいたが、そのことを家族に話してみても、みんな混乱してレリナを見つめ、訝しがった。妹が手術を行ったという事実を家族の誰からも確認できなかったのだ。そして、レリナの家族は自分がおかしくなったものとみなしたのである。

 結局、何カ月経過しても、自分に何が起こったのか、レリナにはその答えは見つけられなかった。そして、レリナはこのように考えるようになった。いつも通りベッドに横になり、翌朝目覚めてみると、自分は平行宇宙にいたのだ、と。

いったい何が起こったのか?

 さて、現在インターネットにおいてはフェイクニュースも飛び交っており、まず疑われるのがレリナの投稿内容なのかもしれない。これは、本人以外わからないことであるが、この出来事は今から9年前に起こった。自身の名前とメールアドレスを公開して情報を求めた事実を考えると、レリナが嘘をついていた可能性は極めて低いと考えられる。

 かといって、そう簡単に受け入れられるような話ではない。レリナの記憶の一部が何者かによって書き換えられてしまったのだろうか?(もちろん、その何者かの存在を仮定すること自体に困難を伴うが)

 仮に平行宇宙の存在を受け入れたとして、レリナを知る人々は、事件(分岐点となった時刻)の前後でレリナの変化に違和感を覚えなかったのだろうか? レリナの存在が入れ替わったとしたら、それまでのレリナはどこに行ってしまったのだろうか?

 ひょっとすると、このように考えることができるかもしれない。たとえば、レリナの会社において、あるプロジェクトを実行に移すべきか否かを選択すべき状況があったとする。そこで、そのプロジェクトを実行に移さなかった場合、レリナの所属部署も上司(経営者)にも変化は起こらない。だが、実行に移すことで、経営難に陥り、経営者が交代し、レリナが担当する仕事の内容も変化することになる。

 ここで、我々の知る世界では、実行に移さなかったシナリオは消滅する。だが、意識の力は見えない世界、つまり平行宇宙においては実体化し、実行されなかったシナリオでも存続する。通常、2つの世界は接触することはないが、なんらかの偶発的な事故によって、もともとそのプロジェクトを実行に移さない世界に属していたレリナが、実行に移したもう一つのシナリオの世界(我々の世界)に飛び移ってしまった可能性はどうだろうか?

 もちろん、現在の経営者の前はレリナの知る経営者だったのか、また自分がかつて所属した部署が過去に存在したのかどうか、レリナは詳細に触れていないため、確認はできず、これはまったくの憶測にすぎない。一方で、宇宙人のような存在によって部分的に記憶の書き換えが行われたとストレートに考えることもできようが、そんな悪戯のようなことが実行される理由にも疑問が残る。レリナには気の毒であるが、残念ながら解決法はそう簡単に見つかりそうにない。少なくとも今のこの世界でレリナには幸せに過ごしてもらいたいものだ。
(文=水守啓/サイエンスライター)

水守啓/サイエンスライター

水守啓/サイエンスライター

「自然との同調」を手掛かりに神秘現象の解明に取り組むナチュラリスト、サイエンスライター、リバース・スピーチ分析家。 現在は、千葉県房総半島の里山で農作業を通じて自然と触れ合う中、研究・執筆・講演活動等を行っている。

著書に『底なしの闇の[癌ビジネス]』(ヒカルランド)、『超不都合な科学的真実』、『超不都合な科学的真実 [長寿の謎/失われた古代文明]編』、『宇宙エネルギーがここに隠されていた』(徳間書店)、 『リバース・スピーチ』(学研プラス)、『聖蛙の使者KEROMIとの対話』、『世界を変えるNESARAの謎』(明窓出版)などがある。

ホームページ: Kei Mizumori's Official Web Site

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