ビジネスジャーナル > マネーニュース > 40代で低所得者世帯が増加  > 2ページ目
NEW
黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

40代で低所得者世帯が増加…可処分所得が60代と同水準に

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー

40代の所得水準は60代とほぼ同じ

 高齢世帯への給付が手厚いということは、現役世代と高齢世帯の所得水準を比較してみても伺える。次の図表は、世帯主の年齢階級別の等価可処分所得金額の推移を表したものである。

「等価可処分所得」とは、1世帯当たりの可処分所得を世帯員数の平方根で割ったもの。世帯員一人ひとりの所得水準を示す目安となる。

 収入と一口にいっても、年収や所得といったさまざまな表記があるが、とくにFP相談などで重視するのは、「可処分所得」である。これは、総所得から所得税・住民税などの税金や健康保険・厚生年金などの社会保険料を控除したものをいう。いわゆる手取り収入といわれるもので、たび重なる制度改正で、年々、税金や社会保険料の負担が増加していることを考えると、可処分所得で家計の見直しやマネープランを立てることが重要なのだ。

 統計によると、世帯主が50~59歳の世帯が最も高く、40~49歳の世帯がこれに続くが、その水準は60~69歳の世帯の水準とほぼ同じ。

 さらに世帯主が30~39歳の世帯の水準は世帯主が70歳以上の世帯とほぼ同水準ということがわかる。

 1世帯当たりの総所得金額は、現役世代のほうが断然多いのだが、高齢世帯は現役世代に比べて世帯人数が少ないため、世帯人数を調整した1人当たりの所得水準はほぼ同じになるらしい。

 高齢世帯と現役世代の所得水準が同じといっても、日々の生活費や教育費負担、住宅ローン返済など現役世代が負うべき支出費用は少なくない。これでは、がんばって働いているのに、生活が豊かになっている実感が30代、40代の現役世代で湧いてこないのも無理はないだろう。

40代で低所得者世帯が増加…可処分所得が60代と同水準にの画像3

収入減を補うための共働き世代は17年間で約1.5倍に

 
 当然のことながら、多くの世帯では、これらの所得減少を補うために稼ぎ手を増やす努力を行っている。すでに共働き世帯が専業主婦世帯と逆転して久しいが、夫婦のいる世帯に占める共働き世帯の割合は1997年の41.5%から2014年には60.8%と約1.5倍に増加している。

 しかし、問題なのは、前述の低所得者世帯の増加の要因ともいうべきおひとりさまやシングルマザー・ファーザー世帯など、収入を補完し合える家族が不在の場合である。基本的に家賃などの住居費や水道光熱費といった生活コストは、一定額かかるため、世帯人員が多ければ割安になり、少なければ割高になる。

 非正規雇用などで収入が不安定、預貯金の額も少ないとなれば、病気やケガ、リストラ、離婚などの突発的なアクシデントが起きてしまうと、持ちこたえられるだけの体力が家計にない。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

40代で低所得者世帯が増加…可処分所得が60代と同水準にのページです。ビジネスジャーナルは、マネー、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!