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江川紹子の「事件ウオッチ」第91回

籠池夫妻の長期勾留は異例なのか?森友問題幕引きを狙う安倍政権と、監視すべき「人質司法」の実態

文=江川紹子/ジャーナリスト
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 起訴後に保釈を許可される被告人の割合(保釈率)も、一時期に比べ増えている。平成の初め頃には2割程度だったものが、一時期10%台に落ち込み、平成15(2003)年には11.74%まで下がった。それが、平成23(2011)年に20%台に回復し、昨年は30.33%まで上がった。

 その一方で、長期に勾留される人は増えている。勾留された人のうち、その期間が6カ月を超える者の割合(長期勾留率)は、平成19(2007)年には5.92%だったが、昨年は7.67%になっている。ちなみに、大阪地裁は長期勾留率も、8.80%と全国平均より高い。

 無罪を主張したり、争点が多岐に亘ったりする事件では、公判前整理手続に時間を要し、公判が始まらないまま、被告人の身柄拘束だけが長々と続くことになる。被告人にとっては、裁判が始まる前に、すでに刑罰を受けているに等しい。

 籠池夫妻の事件は、客観的な証拠は検察が押さえているうえ、起訴されている補助金詐欺で被害者とされているのは、いずれも国や大阪市などの行政だ。夫妻が働き掛けて、被害事実を変更させることは不可能だろう。あとは何人かの関係者との接触を禁じて、それなりの保釈金を積ませれば、具体的な「罪証隠滅のおそれ」はないに等しいのではないか。捜査への黙秘とか、メディアへの露出とか、独特なキャラクターゆえに、長期の勾留が当たり前のようになってはならない。

 行政文書の保存・保管・開示の問題とは別に、司法の「平常運転」に対しても、市民の適切な監視の目を向けていきたい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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