ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
またネットでも動画で使用方法は閲覧できます。本当に簡単ですから、ぜひ一度見てもらえば、もっとAEDの使用頻度が高まると思います。現状では非常識君の言うように1年間でたった1000人前後に行われているのみで、95%以上の人には使用できる環境であっても使用されていないのです。まずは啓蒙が必要だと思っています」
非常識君の意見です。
「ですから、これ以上の設置はあまり意味がなく、いまある器械を有効に使う努力をしたほうがいいのではないかと思っています」
極論君の意見です。
「では、心臓に病気がある人、心室細動を起こしやすい人は、もっと普及を望んでいるでしょうから、彼らの不利益にはなりませんか?」
非常識君の意見です。
「日本全国、どこでも数分以内にAEDの処置を行える環境をつくることは実際には不可能でしょう。公共の場で人が多い場所にAEDを設置することに、まったく異論はありません。でも、どこまでその範囲を広げるかが難しい問題だと思うのです」
使用頻度を上げる努力が必要
極論君の意見です。
「それでは心室細動が起こる頻度が高い人の行動範囲が狭められるのではないですか?」
非常識君の回答です。
「そんなことはないですよ。AEDは個人でも購入可能です。ですから、心室細動が心配な人が家族にいれば、家族に1台AEDを用意すれば良いのです。それは家族のものなのですから、旅行にも一緒に持って行けばいいではないですか。また、最近は埋め込み型の除細動器もありますよ。携帯電話よりも小さい器械を体に埋め込むのです。こうすれば自分専用のAEDが常時自分と一緒に行動している、そしてAEDとは違って完全自動運転です。ですから心室細動が心配な人は積極的に埋め込み型の除細動器を入れる手術をすればいいのです。心臓のペースメーカー挿入とほぼ同じ手技でできるのですよ」
常識君がまとめます。
「ともかく50万台近いAEDがありながら、そしてそれが使える状態でありながら、公共の場で2万人以上もの心肺停止の人に使用されていないことが大問題ですね。まずはAEDの普及もさることながら、その使用頻度を上げる努力が必要ですね。実際に心室細動で死にそうな人がAEDで息を吹き返す動画もネットで見られますよ。『Real Life CPR&AED』という動画は勉強になりますよ。これをみると、AEDの素晴らしさは体感できると思います」
(文=新見正則/医学博士、医師)
●新見正則(にいみ・まさのり)
1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務
幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。