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慶應大・集団強姦、不起訴の裏側…検察の判断はおかしくはない

文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士
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慶應大・集団強姦、不起訴の裏側…検察の判断はおかしくはないの画像1慶應義塾大学(「Wikipedia」より)

 昨年9月、慶應義塾大学の公認サークル「広告学研究会」のメンバーが当時18歳の女子大学生を酒に酔わせたうえ、集団で乱暴したとして集団準強姦容疑で書類送検されていた事件で、横浜地方検察庁は11月28日、不起訴処分にしたと発表した。

 世間では事件の悪質性から厳しい処罰を望む声が多かったが、不起訴処分となったことで、司法に対する不満が高まっている。また、横浜地検が不起訴処分とした理由を明らかにしていないことから、「加害者の親などから圧力がかかったのではないか」といった憶測も多く飛び交っている。

 世間の注目度が高く、厳罰を望む声が多いなかで、なぜ検察は不起訴処分との判断を下したのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。

不起訴処分とした理由

 被害者と加害者の間で「示談」が成立したことは間違いありません。そして、この「示談」の中には、おそらく、「被害者は、加害者の処罰を求めません」という条項があるものと考えられます。要するに、加害者が一定の「損害金」を支払う代わりに、被害者は「処罰を求めない」という合意が成立したわけです。

 被害者としては、(1)そもそも示談に応じない、(2)「処罰を求めない」との条項がある示談には応じない、といった選択肢があるなかで、このような示談に応じたわけです。

 仮に、そうであれば、「被害者が起訴を求めない(処罰を求めない)」以上、国民の代弁者の地位にある検察官が、義侠心などに駆られて起訴することは難しいでしょう。インターネット上では、「起訴しろ」「不起訴はおかしい」といった反応が多いようですが、今回、検察官は被害者の意思を尊重したといえます。

 また、検察官は起訴を判断する際、常に「公判を維持できるか(有罪をとれるか)」を考えます。証拠が不十分など、無罪になるリスクがある場合には、起訴を避けることもあります。

 今回、被害者である女性は、相当量の酒を飲まされていたということなので、「被害者の証言」という証拠の信憑性は低いと考えざるを得ません。

 また、被害者の女性が準強姦罪(現準強制性交等罪)の成立に必要な心神喪失(意識不明レベル)か抗拒不能(抵抗することがとても難しいレベル)にあったのかどうかを評価することが難しいということもあります。再現するのも難しいでしょう。

 さらに、加害者それぞれの証言が合わない、矛盾があるとなると、「果たして誰が性交、すなわち強姦(強制性交等)の既遂の要件となる陰茎の挿入をしたのか」「加害者たちに、酔ってつぶれた状態を利用して女性を強姦しようという共通認識があったのかどうか」など、証明することが難しくなります。

 このように、検察官は“確実に有罪がとれるかどうか”という観点も加味して、起訴するかどうかを決定します。

 したがって、「権力」や「圧力」によって不起訴処分になったということは、あまり考えられません。

 なお、「死刑」もあり得る強盗傷害事件でも、示談が成立したことを理由に不起訴処分とされた例もありますので、「強姦」なのに不起訴はおかしいということもありません。
(文=編集部、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士)

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