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東京ヤクルト、なぜ最下位でも観客動員が激増? 神宮球場の「魅力」

取材・文=武松佑季

「今年は1試合平均して『生ビール半額ナイター』では、5000人の増客がありました。多い時は7000~8000人増にも。ビールを半額にするイベントをやったのはうちが初めてではありませんが、この数字を見ると他球団さんは非常に驚く。サラリーマンやOLが仕事帰りに来やすい神宮球場の立地から考えて、家族、友達、同僚たちと野球観戦を楽しみたい方々がお得な半額ビールをきっかけに来場されるケースが多いからなんだろうと思います」

 神宮球場は球場周辺を含めて野球の雰囲気を楽しめるボールパークではないし、ましてや神宮球場は明治神宮の所有物で学生野球との併用球場でもある。広告にさける費用は多くなく、東京という地方出身者の集まる土地柄なので、広島東洋カープや北海道日本ハムファイターズなどのように地域に密着させるのは簡単ではない。

 だからこそ、会社帰りの観客に一杯飲んで帰ってもらう“神宮呑み”を提案したいと伊藤氏。その一環として、「生ビール半額ナイター」がある。そしてそれとは別に、今年は球場内外で全国の有名からあげ店舗が出店する「神宮からあげ祭」を開催した。

「こちらも3000~4000人もの増客がありました。やっぱり神宮の強みのひとつはここなんだなと再確認しました」(同)

球場の光景もSNSで拡散する若者たち

 もうひとつ、神宮に訪れる東京ヤクルトファン恒例となっているイベントがある。それが毎年夏の期間(7月下旬~8月下旬)の東京ヤクルト主催試合で5回裏終了時に300発の花火が打ち上がる「神宮花火ナイター」だ。

「神宮球場は都内にあるので、球場で花火を上げると球場から少し離れたところでも『これどこの花火?』『神宮のヤクルト戦で上げてるみたいよ』といった会話が周囲の方々から生まれるらしいんです。都内の、しかも山手線の内側で花火が上がることはあまり多くないので、意図したわけではないですが野球に関心がない人へのPRにつながっていますね」(同)

 野球を見ながら仰ぎ見られる夜空の打ち上げ花火は、野球ファンでなくとも格別なのである。さらにナイターの場合、試合開始直後にレフトスタンドの向こう側に沈んでいく美しい夕日を眺めることもできる。どちらも神宮球場ならではの光景だ。世はSNS時代。こういった体験や画像をインターネット上に投稿する若者の存在も、新規の観客が神宮に足を運ぶきっかけになっている。

「物質的でないメンタルの部分での娯楽要素も大切にしていきたいです」(同)

 現代はモノを購入するよりも、何か体験することに消費の意識が向いている時代。球団としてもそこを狙いたいのだ。

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