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東京湾の領土争い激化、大田区が江東区を提訴も

文=小川裕夫/フリーランスライター

 それでも、両者は主張を譲らない。解決の糸口が見えないまま、両者は東京都庁内に設置された東京都自治紛争処理委員に解決を委ねることにした。

 自治紛争処理委員は中央防波堤のうち、86.2パーセントを江東区に、13.8パーセントを大田区に帰属させるとの調停案を提示した。東京都が提示した調停案は、実質的に江東区の勝利と言っていい内容だった。

新海面処分場

 当然ながら、大田区はこの調停案に納得せず、江東区を提訴してまで争う構えを見せている。しかし、中央防波堤にアクセスする公共交通は、東京テレポート駅前から発着している都営バス「波01」だけしかない。大田区と中央防波堤とは海底トンネルで結ばれているものの、大田区側から中央防波堤に行くことは困難だ。

 また、これまでも中央防波堤での事務処理は、暫定的に江東区が担当していた。そうした面を踏まえると、中央防波堤の帰属問題は江東区側に理があると関係者間では以前から根強く囁かれていた。

 大田区側も帰属問題では分が悪いことは薄々気づいているフシがあった。問題の本質は、「江東区8割:大田区2割」という割合の問題ではないようなのだ。

「今回の調停案で示されたのは、あくまでも中央防波堤の帰属にすぎません。東京都は中央防波堤のさらに南側に、新しい埋立地を造成しています。これは新海面処分場と呼ばれる埋立地ですが、その面積は約480ヘクタールとされています。中央防波堤に匹敵する広大な土地の帰属が、未定のままになっているのです。新海面処分場の帰属問題も、これから争われることになるでしょう」(同)

 つまり、新たに生じる新海面処分場の帰属問題に先手を打つため、大田区は中央防波堤について「どれだけ取るか」より「どう線引きされるのか」を重要視しているようなのだ。

 今回、東京都の自治紛争処理委員が示した中央防波堤の線引きを見ると、この後に浮上する新海面処分場の帰属問題でも江東区が有利のように見える。大田区がこの線引きを容認したら、中央防波堤の多くを江東区に取られてしまうだけではない。新海面処分場側も大きく奪われることになるのだ。

 大田区が今後の帰属問題を優位に進めるためには、江東区と新海面処分場とが接しないことが望ましい。水面下では、江東区が新海面処分場に接しないような線引きにしよう、という駆け引きが行われているともされる。

 東京都自治紛争処理委員の協議内容は非公開とされているので、何を話し合ったのかが外部からはわからない。それが、かえって憶測を呼ぶ原因にもなっている。

 東京湾の埋立地問題は、火種を残したまま東京五輪を迎えることになるだろう。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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