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中沢光昭「路地裏の経営雑学」

三越伊勢丹、200億円かけて1000人クビ切る前にまず…

文=中沢光昭/経営コンサルタント

 年単位でどれくらいの赤字だったのかは不明ですが、母体や意思決定のしっかりした投資ファンドが30億円も出すということは、そこまで壊滅的でもなかったのではないかと考えられます。だとすれば、今回リストラ対象にする社員のなかから、たとえば20人ほどを選出し、1年間は親会社が給与を保証するかたちでクイーンズ伊勢丹に“改革部隊”として送り込んでも良かったのではないでしょうか。

 ただし、1年たって改善の兆候が見られなければ割り増し退職金は4分の1にするというムチの一方で、アメとしては良い結果が出れば新しい給与水準のもとで自由に働けるというものとセットです。覚悟していた退職金の割増分がもともと4億円(2000万円×20人)なので、1年分の人件費の1.7億円(850万円×20人)と、1年後にクイーンズ伊勢丹の業績改善がうまくいかない場合に支払う退職金割り増し分の1億円を差し引いても、1.3億円残ります。

 残った予算は手ぶらで送り込むのではなく、自由に差配できる投資の原資としてクイーンズ伊勢丹に割り当てて販促や改装に当てるなどして、「必死になってがんばりましょう」というメッセージにします。

 もしくは、やや高給であってもリーダーとなる人材を外部から採用してくる原資に充ててもいいでしょう。

身内だとやりにくければ、ビジネスライクな環境を探す

 ここで、逆に同じグループ内だと過去の諸々の経緯があったりして、ヒト同士の複雑な感情が絡むのでオペレーションがやりにくいという雰囲気があることも想像できます。その場合、冒頭で触れたように、類似業種で後継ぎがいない中小規模の事業者を引き取り、雇用の受け皿にしていく手段があります。

 1.3億円あれば、筆者が過去に検討した事例では5~10店舗を展開する外食企業や小売企業などが買収できました。業績は決して良くないうえ、人材不足でした。20人送り込んだとして、1年後に数人に絞り込んだり、もしくは黒字でグループに迷惑がかからなければ構わないというスタンスでできるだけ雇用を継続したりなど、その結果を見ながらさまざまなかたちが考えられます。

 過去に筆者が譲り受けた会社でいえば、10年以上連続で赤字が続いていた会社は10カ月、3年連続で赤字だった会社は2カ月で単月黒字を達成し、そのまま継続させていますので、投資を検討する際にある程度見極めれば、業績を回復させて新しく投入した人材の人件費を負担していくのも不可能ではないと思います。

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

中沢光昭/株式会社リヴァイタライゼーション代表

企業再生コンサルタント兼プロ経営者。
東京大学大学院工学研究科を修了後、経営コンサルティング会社、投資ファンドで落下傘経営者としての企業再生に従事したのち、上場企業子会社代表を経て独立。雇われ経営者としてのべ15期以上全うし、業績を悪化させたのは1期のみ。
事業承継問題を抱えた事業会社を譲受け保有しつつ、企業再生とM&Aをメインとしたコンサルティングおよび課題内容・必要に応じて半常勤による直接運営・雇われ経営者も行う。シードステージのベンチャー企業への出資も行う。
株式会社リヴァイタライゼーション 代表・中沢光昭のプロフィール

Twitter:@mitsu_nakazawa

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