「親が子どもに無理矢理導入」は逆効果?
長谷川 こちらとは別に実施した、「タイマーロック1」を用いた実験では、調査対象を以下の3タイプに分類しました。
1.「セルフユーザ」……自分で「タイマーロック1」を導入したユーザ
2.「チャイルドユーザ」……親に勧められ納得して「タイマーロック1」を導入したユーザ
3.「フォースドユーザ」……親に「タイマーロック1」を納得いかないまま導入させられたユーザ
アンケートでは、「自分のスマートフォン利用に弊害を感じている」「タイマーロックを利用してよかった」の2つの問いに、「はい」と答えたユーザは、セルフユーザ>チャイルドユーザ>フォースドユーザの順になりました。
――そもそも「自分でなんとかしよう」と思わない人に無理矢理勧めたところで目覚ましい成果は得られにくい、ということが結果として出ているんですね。
長谷川 たとえば、ファミコンのようなゲーム機なら「親が隠す」ということもできましたが、携帯電話やスマホは子どもの塾通いなど必要に迫られて渡すケースが多いので、「隠す」をすると必要な機能も使えなくなってしまいます。
そこで、必要最低限以外の「機能を隠す」という手法を取ったのが「タイマーロック」シリーズです。しかし、先ほど述べたように、自分で改善したいと思わない人に無理矢理使わせても改善効果が弱いという結果も出ています。
そのため、親が子どもに教育目的で使用する場合には、しっかり両者で話し合いをして合意やルールを決めた上で、「タイマーロック」はあくまでツールとして使用していただくのが望ましいと思います。
――ありがとうございました。
スマホ依存を「予防」する仕組みが大切
「自分のスマホ利用を、もう少しなんとかしたい」と思う人は、今回紹介したゲーミフィケーションの「可視化」の考えを活用しない手はないだろう。
たとえば、ベネッセコーポレーションが提供する「スマホ利用時間チェッカー」は、自分がスマホでどのようなアプリを何分使ったかがわかるアプリだ。現状を知ってショックを受けることから、すべてが始まる。
また、「可視化された結果を見ることは、最初は効果が出るが時間がたつと効果が弱まる」という点も考慮したい。何しろ、スマホは魅力的だ。あの手この手で自分のスマホ利用制限を鼓舞していく仕組みを、継続して持つことが大切だろう。
そして、インターネットに限らずあらゆる依存において、症状が重篤化して社会生活を送ることが困難になった人への支援は必要だが、同時に今回の「タイマーロック」のような、「そこまで症状が重くならないうちに自分で気づいて、自力で軌道修正する人を増やす」という「予防」の取り組みも同じくらい大切だ。
「依存」に関する報道は、どうしても「重篤化した人への対応」が多い。本連載では、今後も「予防」に向けた取り組みを紹介していきたい。
(文・構成=石徹白未亜/ライター)
【参考資料】
『子供のスマートフォン依存を抑制する画面ロックアプリケーション』(情報処理学会論文誌教育とコンピュータ Vol.1 No.3<2015年7月>、長谷川達人、越野亮、葭田護、木村春彦)
『ゲーミフィケーションを用いたスマホ依存抑制のための画面ロックアプリケーション』(情報処理学会研究報告 Vol,2017-CE-139 No.10 2017/3/11、長谷川達人、葭田護)
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