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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

「ボケ知らずのシニア」に共通した食事習慣…肉、牛乳、油脂をよく食べる

文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士
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「知的能動性」

 筆者らは、シニア世代の命の質の大切な構成要素となる余暇活動や創作・探索など日常生活を楽しむ能力「知的能動性」の老化による障害を予防している食生活を明らかにすることができた。ちなみに、「知的能動性」は普段の生活に楽しみを創出する能力だ。老化に伴いとても障害されやすい。

 このいわゆる「知の老化」は、筋肉骨格などからだの形態に現れる老化より早く訪れるのである。シニア世代の「知の老化」の予防策が見えてきた意義は大きい。東京都内約600名のシニアの協力を得て2年間追跡調査し分析したところ、肉類、牛乳、油脂類を頻繁に食事に取り入れ、主食としてパンをよく食べる習慣のあるシニアほど、「知的能動性」の能力の衰え、すなわち「知の老化」が防げていることがわかった(熊谷修ら、老年社会科学、16、p146-155、1995)。

 さらに、この関係は「交通機関を使った外出」「金銭管理」「友人との交流」など地域で暮らす総合能力においても認められることがわかった。都市部や農村部など地域性にかかわりなく、わが国の地域高齢者に認められる関係である。

 肉類や牛乳などの動物性食品と油脂類を食べ、主食にはごはんだけではなくパンも選ぶ適度に欧米化した食生活によってもたらされる多様性に富んだ食生活が、「よい老化」に欠かせないのである。

 健康長寿の“健康”の部分と“長寿”の部分に寄与する食生活の特徴は共通している。統計学的な処理を施すと肉、牛乳、卵、油脂などの摂取の大切さが際立つ背景は、これらの食品群が適度な欧米化した日本食(和食)の特徴を象徴する食品群のためである。「年をとったら、肉や脂っこいもの避けるべき」とのパラダイムが定着して久しい。長命な高僧の少食(小食)を描写し「長寿には粗食」との短絡思想も生まれる。曲解この上ない。「長寿の結果、食が細くなり多様性が失われた」だけのことである。因果の逆転なのである。科学データを正視すれば健康長寿に寄与する食事は真逆なのである。
(文=熊谷修/東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、学術博士)

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事

1956年宮崎県生まれ。人間総合科学大学教授。学術博士。1979年東京農業大学卒業。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国最初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者である。東京都健康長寿医療センター研究所協力研究員、介護予防市町村モデル事業支援委員会委員を歴任

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