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サンリオ、迷走で経営悪化…56年社長君臨、28歳の孫が専務昇格で世襲確定

文=編集部
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ライセンス事業に替わるビジネスモデルを描けるか

 サンリオの転換点は13年11月19日、サンリオの海外事業担当だった辻邦彦副社長が出張先の米ロサンゼルスで急性心不全のため死去したことだ。信太郎氏の長男で享年61。信太郎氏から社長の座を引き継ぐのが既定路線だった。それだけに社内に与えた衝撃は大きく、ここからサンリオの迷走が始まった。

 サンリオは1990年代後半が黄金期だった。女子高生の間でハローキティのグッズを買い集めて自室に飾る“キティラー”現象が巻き起こり爆発的に売れた。99年3月期の売上高は1500億円、営業利益180億円まで増加した。

 ブームが消えると売り上げは年々減少。2000年代の長期低迷の時代に副社長を務めていた邦彦氏は、ある人物をスカウトした。鳩山玲人氏だ。三菱商事出身、ハーバード・ビジネススクールでマーケティングを学び、MBA(経営学修士)を取得した。

 2008年、鳩山氏は邦彦氏に誘われて、米国法人のCOO(最高執行責任者)に就任。10年、サンリオ本体の取締役事業本部長、13年4月常務取締役になった。

 邦彦氏と鳩山氏は北米で物品販売からハローキティのライセンス収入にビジネスモデルを転換した。ライセンスビジネスとはハローキティの商標使用権を他社に供与しロイヤリティ(使用料)を得る事業だ。物販に比べて売り上げは減るが利益率は高い。

 このビジネスモデルの転換は大成功で、4期連続の営業増益となり、14年3月期の営業利益は210億円。鳩山氏が米国法人に入社する直前の07年3月期の41億円から5倍となった。ロイヤリティ売り上げは349億円で全社売り上げの45%を占めた。サンリオはライセンスビジネスで稼ぐ企業に大変身した。株価は6270円(13年9月27日)に急伸。鳩山氏が取締役に就任した10年の安値652円(10年2月28日)の9.6倍に高騰した。

 その最中に邦彦氏が死去。鳩山氏は最大の後ろ盾を失ったことになる。ライセンスビジネスの立役者である鳩山氏に逆風が吹き付けた。

「販売を重視し、ライセンスビジネスでない方向に重点を置く」。14年5月、信太郎氏が機関投資家向けの決算説明会でこう発言したが、この発言に市場関係者は首を傾げた。ドル箱に育ったライセンスビジネスから、元のグッズ販売会社に戻るという“先祖返り”だったからである。

 信太郎氏の方針で物販販売が強化され、ライセンスビジネスは後方に追いやられた。サンリオが16年6月23日に開催した株主総会で鳩山氏は常務を退任。信太郎氏の孫、朋邦氏が取締役に昇格。信太郎氏は最大の功労者の鳩山氏を切り、孫を後継者に据えた。鳩山氏はその後、LINEの社外取締役に転じた。

 そして、今年6月22日の株主総会後の取締役会で朋邦氏はナンバー2に昇格。孫にバトンを渡すことを明確にしたわけだが、朋邦氏の経営者としての力量は未知数である。

 今年90歳になる信太郎氏は血の継承にこだわった。邦彦氏の死後、邦彦氏の妻の友子氏を取締役にし、中国・香港・ASEANの事業を統括する海外事業本部を担当させた。次期社長候補を母親が取締役として補佐する構図だ。「まるで社長を母親が陰でコントロールしていたタカタのようだ」(外資系証券会社のアナリスト)と懸念が深まった。

 負債総額1兆7000億円で経営破綻したタカタと酷似する構図に株式市場は拒否反応を示している。上場企業の次のトップを母親が“お守り”する姿は、開かれた会社とはいえない。

 また、ライセンスビジネスから物販に切り替えたことは効果よりマイナス面が大きかった。

 18年3月期の営業利益は63億円の見込みで、ライセンスビジネスで稼いでいた全盛期の営業利益(210億円)の3割にとどまる。創業者の高齢化に、次期社長と目されている孫の経営能力が未知数なことが重なる。投資家がサンリオ株を敬遠したとしても、何の不思議もない。
(文=編集部)

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