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ケースで見る!「働くハイスペック女子」への処方箋

私がベビーシッターの積極的活用を勧める理由…コストは将来必ず回収できる

文=矢島新子/産業医、山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表

社会への問題提起としての子連れ出勤

 
 最近になって、また新たな「アグネス論争」の火種が報じられています。熊本市議会の女性議員が乳児を議場に連れてきたところ、議会が開会できずに紛糾した、という事例です。毎日新聞やBuzzFeedなど複数のメディアが、議員本人へのインタビューに基づく記事を掲載しています。議員の主張の要点は以下です。

(1)いつか子どもを議会に連れてきて、働く母親の子育て支援について問題提起するつもりだった
(2)議会事務局からは、議員控室で誰かに子どもを見てもらってくださいと言われたが、その対応では不十分なので、タイミングを見計らって議場につれてきた
(3)今回子どもを議場に入れることについて、議会事務局の事前許可は得ていない
(4)そもそも空腹でなければ機嫌よくしている子だし、当日の議事はわずか15分で終了する予定であったことから、実質的にはなんら支障なかったはずだが、意外にも大きな問題となってしまった

 前出のアグネス・チャンさんのケースが、単に子どもをそばに置いておきたいという理由で子連れ出勤した、いわば「能動的子連れ出勤」だとすると、今回の議員の彼女も、自分の主張の実現のためにある種のパフォーマンスとして子連れ出勤をしているわけですから、同じ性質のものだといえるでしょう。

 これは、預け先がなくて切羽詰まって子どもを職場に連れてくる「受動的子連れ出勤」とは根本的に異なります。子連れで議会に出席することを認めるかどうかは熊本市議会、また究極的には熊本市民の判断ということになるのだろうと思いますが、少なくとも、今回の彼女の行動はいい問題提起になりました。仕事と子育てを両立する女性が増えるなか、女性は職場では完璧に任務を全うしながら裏ではこんなに大変な子育てをしているということが、よく伝わったのではないでしょうか。

 ただし、そもそも議場に子どもをつれて行くことの可否にかかわらず、議場自体が子ども自身、とりわけ乳児にとって決していい環境であるとは思えませんので、この点については配慮が必要だったようにも思います。

 ここでちょっと思考実験をしてみましょう。彼女が議場に連れてきたのが、「家に置いておくことができない子犬」だったとしたらどうでしょう。世間の理解と支持が得られるでしょうか。では、「家に一人で置いておくことができない、寝たきりで認知症の、胃瘻がある年老いた父親」だったらどうしますか。この場合、乳児と何が違うのでしょうか。老人介護のための施設を議場に併設すべきだという主張に妥当性はあるでしょうか。

矢島新子/産業医

矢島新子/産業医

矢島新子
山野美容芸術短期大学客員教授。ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒。パリ第1大学大学院医療経済学修士、WHO健康都市プロジェクトコンサルタント、保健所勤務などを経て産業医事務所設立。10年にわたる東京女子医科大学附属女性生涯健康センターの女性外来、産業医として数千人の社員面談の経験より、働く女性のメンタルヘルスに詳しい。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』(洋泉社新書)ほか。
株式会社ドクターズヘルスケア

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