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不正まみれのリニア工事…ゼネコン間で「調整」疑惑、JRも関与でズブズブの関係か

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――今は仕事をむやみに取っても、建設職人も資材も集まらない時代ですからね。

森山 建設職人の新たな供給がこの10年、大幅に減少した半面、団塊の世代の方が引退して、絶対数が少なくなっています。それに、親方が若い人に仕事の指示をしようとしてもその若い方がいない時代ですから、下請業者も容易に仕事を請けられないのです。

――今回、JR東海側が秘密裏に大林組に対して「予定価格」などの入札情報を漏らしたとの報道がありますが、これをどうお考えですか。

森山 入札情報を漏らしたとされるJR東海社員の経歴、具体的には学歴や職歴、大林組との接点などを調べたほうがいいです。発注者側も、「どうせゼネコンに仕事を委託するのであれば、先輩や後輩がいる会社に有利に受注させよう」という思惑が働き、軽い気持ちで漏らした可能性もあります。

――発注側とゼネコン側の人間関係ができると、非公開の情報も教えてくれるということですか。

森山 さまざまな研究会に出席してマメに人間関係を構築すれば、情報によりますが、教えてくれるということもあります。しかし、「予定価格」を教えると入札の意味がなくなってしまいます。たとえば今回のリニア工事の案件でいえば、ゼネコンの営業担当者が「私はJR東海のこういう人間を知っています」と上に報告すれば、当然ながら工事に関する情報を入手するよう指示を受けます。そこで工事の予算額を聞き出し、あとはゼネコン同士の調整に入るわけです。

消えた談合


――今回不正の疑いが持たれている「名城非常口」工事では、大林組は入札で鹿島と競合しましたが、鹿島はあえて咬ませ犬的な役割を演じたのでしょうか。

森山 それはないでしょう。今は入札参加するだけで書類作成など結構な経費がかかりますから、咬ませ犬的な役割はどこのゼネコンもしません。今、話題になっている豊洲市場工事で入札不調が相次いでいましたが、競合しているのではなく1社も入札参加しないという状態が続いていました。ですから取りたくない、取る必要のない工事には入札参加しないのでしょう。リニア工事でも、「鹿島が100億円で入札した」「90億円なら大林組は受注できる」というような情報を漏らした人物は別々かもしれませんが、いずれにせよ、こうなると入札の意味はなくなります。

――昔の談合事件と今の「調整」では、質がずいぶん変わりましたね。

森山 昔の談合は堂々と行われ、メモ帳などに証拠や痕跡も残されていました。今は、そういう痕跡を残さないようにしていますから、人物の特定も以前より困難になっています。昔なら「国会議員の誰々先生に話を通したのですか」というところから始まって、初めて談合が成立していました。今は業者同士が話し合いのしやすい環境になりました。

――謎のひとつに、不正疑惑が持たれている「名城非常口」工事の案件はビックプロジェクトでもなく、大儲けできるものでもありません。なぜ、大林組はそんなに必死になったのでしょうか。

森山 ひとつはこれを受注することによって、非常口からつながる地下トンネル工事受注を有利にしたり、もしくは名古屋支店の売上をこの時期においては確保したかったなんらかの事情があったのかなど、さまざまな事情が考えられます。

ゼネコン業界への誤解


――今の建設業界全般は儲からないですね。ここに世論とのギャップがあります。

森山 そう、建設業は他産業と比べて利幅が薄いのです。たとえば缶コーヒーのような商品は原
価と売値の差が大きいので、利幅を使っていろいろなことができます。建設業は下請けの見積もりを積み上げた原価に、最後にちょっとだけ経費を乗せてという感じです。

――現在、リニア工事以外でもゼネコン間で調整は行われているのでしょうか。

森山 行われています。なぜなら、話し合いをしないと仕事が回らなくなるからです。たとえば、1社が受注しすぎると仕事が回らなくなります。職人や資材の手配が追いつかないからです。各ゼネコンには、系列の下請がついていますから、そちらにも差配をする必要があるので、話し合いをすることが大切なのです。

 ゼネコンとしては、それを「談合」と言われるのは心外だと、さらには「調整によって大儲けしたり、収賄でお金が動いているわけではない」という言い分かもしれません。

――その「言い訳」を正しいとする論調もありますが、いかがでしょうか。

森山 現実的に今、調整がないとゼネコンはみんな疲れ果てます。だから、大林組は本来であれば記者会見を開いて、「原価はこうで粗利はこうで、暴利を貪っていないのです」と言うべきです。そうしないと世間からあらぬ誤解を受け続けます。ゼネコンは積極的に記者会見をしません。インフラ整備など社会的に重要な役割を担っているのですから、もっと広報部を強化し語るべきです。

 私はゼネコンの社史を集めていますが、明治時代から名物社長の登場や素晴らしい構造物をつくってきた歴史があります。ゼネコンはよりその輝かしい歴史を語るべきです。今回の強制捜査について大林組がもっともダメな点は、沈黙していることです。隠すことはリスクであると認識しなければ、ゼネコンはよくなりません。

――ありがとうございました。
(構成=長井雄一朗/ライター)

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