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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

「加工食品は毒、天然物は安全」は大間違い? 誤った調理法によって食中毒の例も

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授
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 テレビで見たことですが、若い女性のレポーターが開発途上国の奥地にある村に行って、彼らが主食とする大きな芋虫のようなものを土の中から掘り出して、現地の人たちと一緒に焼いて食べるのを見たことがあります。特に嫌な顔もせず食べているのを見て、とても素晴らしいと思いました。

 国により、地域により、各家庭により食べるものは違っています。現在の日本に限定して考えて見ても、自給自足の人はごく少数で、大半は市販品を食料としています。普段、当たり前に食品として食べているものにほうれん草やトマトなどを考えて見ると、ほうれん草もトマトも単一成分の物質ではありません。我々が普通に食べ物として認知しているものも、多くの成分からなり、食べ方によっては毒になります。

普段食べている食べ物と毒

 高級食材として人気のあるフグは、誰でも知っているように卵巣や肝臓は強い毒を持っています。また、種類によって毒のある部位が異なり、生息する海域によっても毒の強さが異なることも知られています。日本ではあまり知られていませんが、世界的に見て最も中毒患者が多い魚はオニカマスやバフエダイ等の熱帯に生息する有毒魚です。これら有毒魚によって起こる特異な食中毒は総称でシガテラ中毒といわれ、患者は年間4~5万人程度といわれています。

 鰻を好きな人は多いと思いますが、鰻の刺し身を食べた人はあまりいないのではないでしょうか。鰻の血液には毒があることは鰻を調理する人は常識として知っています。海藻では、自分でオゴノリを収穫して食べたことによる中毒や死亡事例があります。刺身のツマとして良く知られている緑色のオゴノリですが、海で生息しているときは昆布と同じような褐色をしています。市販されているオゴノリは石灰で処理をすることにより、褐色から緑色に変化します。処理をしないで食べて中毒を起こしたり、死亡した例もあります。緑色になったものは酵素活性がなくなっているので、安心して食べられます。

 植物では、ジャガイモによる食中毒は毎年のように起きています。代表例として、小学校で食育の一環としてジャガイモを育て、収穫し、食べるという教育が多くの小学校で行われています。収穫後に直射日光下でジャガイモを放置すると皮の部分が緑変し、その部分には芽の部分と同程度のソラニンが含まれるため、緑変したジャガイモを食べると中毒を起こしてしまいます。

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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