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西島基弘「食品の安全、その本当と嘘」

「加工食品は毒、天然物は安全」は大間違い? 誤った調理法によって食中毒の例も

文=西島基弘/実践女子大学名誉教授
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 トマトも原種はとても小さくて、かなり強い毒を持っています。現在食べているトマトは食用としては向かない未熟な時期にはトマチンという強い毒性がありますが、食べられる頃には毒はなくなっています。

 ほうれん草も茹でて灰汁(あく)を取ってから食べますが、灰汁の中にはシュウ酸等が含まれているので、灰汁抜きをしないであまり多くを食べるのはお勧めできません。近年、改良によりサラダとして食べられる品種も販売されるようになりました。

 そのほかにも昔から伝承されているような処理方法や食べ方であれば安全ですが、自己流で食べると食中毒の原因となり死亡する例もあります。自然、天然が安心で化学的につくった物は危ないというのは、まったく間違えた話です。

 テレビでダイエットに良いとして紹介された調理法により白インゲン豆を調理した人が、嘔吐、下痢等の消化器症状を呈し騒ぎになったことがあります。紹介された調理法は「白インゲン豆を2~3分煎り、粉末状にして食べる」という調理法でした。この調理法では、中心まで火が通らず、レクチンが充分に熱変成しなかったため中毒を起こしたとされています。

 健康被害が出た人は大匙2杯程度食べた人が多かったといわれています。厚生労働省は患者158名、入院者数は30名と発表しています。インゲン豆中に含まれるレクチンは、十分に加熱すれば活性を失います。インゲン豆によって中毒を起こすことは昔から知られており、長年の経験で煮るという調理法でインゲン豆を食べてきました。原因となった豆は白花豆や手亡豆等で、いずれもインゲン豆の仲間です。加熱していない豆はあまり美味しくないことからもダイエット等と称して食べるのは控える必要があります。

 このレクチンはジャガイモ、枝豆、大豆、インゲン豆、レンズ豆などに多く含まれています。しかし、これらは生で食べる習慣はなく、従来通りの食べ方をしていればまったく安全です。

 自然毒は少しでも含んでいればただちに危険というのではなく、食べる量にもよります。普通はなんらかの加熱処理をする食べ物を、生のままで食べる等、あまり変わった食べ方をしないことをお勧めします。
(文=西島基弘/実践女子大学名誉教授)

西島基弘/実践女子大学名誉教授

西島基弘/実践女子大学名誉教授

実践女子大学名誉教授。薬学博士。1963年東京薬科大学卒業後、東京都立衛生研究所(現:東京都健康・安全研究センター)に入所。38年間、「食の安全」の最前線で調査・研究を行う。同生活科学部長を経て、実践女子大学教授に。日本食品衛生学会会長、日本食品化学学会会長、厚生労働省薬事・食品衛生審議会添加物部会委員などの公職を歴任。食品添加物や残留農業など、食品における化学物質研究の第一人者として活躍している

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