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杉江弘「機長の目」

日航機墜落事故は、今のハイテク機でも起こり得る…JALが再発防止策を検討しない理由

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 一般的にアメリカ人のパイロットは世界で起きた大事故に関心を寄せ、自分ならどうやって生還を果たすのかを考える習慣がある。それは子どものときから、何か問題が起こると親が「あなたならどうするの?」と必ず聞くような文化の上に成り立っているからなのかもしれない。

 一方、日本では何か事故や事件が起きても、犯人を探し出して罰を科すことで終わりにするという文化があり、再発防止ということは苦手だ。

 論理的に原因が解明されなければ、再発防止策は打ち出せないというのは一理あろう。しかし、過去に起きた航空事故では原因が特定できなかったり、ブラックボックスを回収できても政治的な要因で公表されず、うやむやにされた事例も少なくない。それでも、専門家による分析によって、再発防止につながる教訓を見いだすことは不可能ではない。

 近年では「フライトレーダー24」というサイトを見れば、ブラックボックスの回収以前でも、あるいはそれが発見できなくても、飛行状態のかなりの部分が解析できて、再発防止の上での教訓を得ることもできるようになった。

想定しない事態は起こり得る


 日航機事故の原因は、圧力隔壁の破損による減圧によって起きた垂直尾翼と油圧ラインの損傷だとする航空事故調査委員会の見解や、機体固有のトラブル、あるいは都市伝説となった自衛隊や米軍による撃墜説などいろいろいわれてきた。では、真相はどこにあるのか。

 私は長年事故機と同じボーイング747(ジャンボジェット)を操縦してきた立場から、当時から一定の結論を保っている。そのなかでミサイルなどの飛翔体が垂直尾翼に衝突したとする説は、ブラックボックスの科学的データからは100%あり得ない。仮に、なんらかの物体が約10メートルもある巨大な垂直尾翼に当たれば、機首が反作用で変位するはずであるが、123便は異変があった後も、250度の方位を維持して飛んでいたのである。

 つまり、自衛隊や米軍による攻撃だとする陰謀説は非科学的な妄想と断言できる。詳しくは私の最新書『JAL123便墜落事故』(宝島社)で解説しているので、関心のある方はご一読いただきたい。

 同書では、何よりも重要な再発防止策について、いくつかの提言を行っている。そのひとつは、航空機が再び123便のようなトラブルに遭遇したら海上着水を選択肢に持つべきであるというものだ。それを納得してもらうために、私が行った実験データや具体的操縦方法も書き加えている。

 残念ながら、現在でも国内航空会社はそのような危機管理には関心はなく、メーカーが想定する緊急事態に限定した教育訓練の域を出ていない。

 しかし、冒頭でも述べたように現代のハイテク機でも123便と同じトラブルに遭遇したり、「ハドソン川の奇跡」のようにすべてのエンジンに鳥が入りグライダー同然となる、メーカーが想定しない事態が容易に想像できるのだ。

 航空会社がパイロットにそのような想定外の事態への準備をしていない現状では、利用者の立場としては、「ハドソン川の奇跡」のサレンバーガー機長のような優秀なパイロットが操縦してくれる便に運よく乗り合わせる以外には、想定外の重大事故に遭っても生存する道はない。
(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

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