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成馬零一「ドラマ探訪記」

『民衆の敵』、実は傑作なのに大コケさせたフジテレビの責任

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 脚本は黒沢久子。脚本家の荒井晴彦の弟子筋に当たる人で、映画『花芯』(クロックワークス)の脚本や、ドラマ『ウルトラマンX』(テレビ東京系)のシリーズ構成などを手掛けている。今年はAmazonプライム・ビデオで放送された『東京女子図鑑』が話題になっていたが、いわゆる民放地上波の連続ドラマを手掛けるのは初めてで、大抜擢といってもいいだろう。

 黒沢はその期待に見事に応えており、題材の選び方もキャラクターの描写も一見軽いように見えて重厚で、実力は完全に証明できたと思う。

苦戦の理由はフジテレビの支援体制?

 ただ、それだけに残念な点も多い。まず一番に思うのは、展開が早すぎるということだ。初回の選挙も1話で終わらせるのはもったいない。もっと話数をかけて、じっくりと描くべきだと思った。

 第6話からは第2部となり、佐藤が新市長となるのだが、これも展開が早すぎる。そもそも物語自体が1クールに収まる題材ではないのに、無理矢理詰め込んでいるので展開に無理が出ているのだ。だから、視聴者は気持ちがついていけずにどんどん脱落しているのだろう。

 せめて2クール(半年)の放送であれば、もっとじっくり描けたはずだ。また、最初からバディものというコンセプトを明確にしていれば、視聴者も入りやすかったはずだ。

 今の月9は視聴率が低迷し、大混乱期にある。だからこそ、専業主婦だった佐藤智子が市議会議員になるように、黒沢久子のような外部の才能を大胆に起用できたのだろうが、肝心のフジテレビサイドの編成の意識が旧態依然としたままなので、どうにも脚本の足を引っ張っているように見える。

 番組宣伝も「高橋一生におんぶに抱っこ」という感じで、肝心の内容が伝わっていない。本来であれば、こういうドラマこそ情報バラエティ番組と連携して作品のおもしろさを伝えないといけないはずだ。NHKの朝ドラや大河ドラマはそういう連携がうまく、放送期間が長いため視聴者に作品の魅力を伝えることに成功していたのだが、フジテレビはそういうバックアップがまったくできていない。

 フジテレビの支援体制の弱さが、そのまま佐藤議員が市議会と対立して足を引っ張られていく展開とリンクしているように見えるのは、なんとも皮肉である。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)

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