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カルビー・ショック…北米事業が巨額赤字へ、ポテチも極度の不振

文=編集部
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カルビー・ショック…北米事業が巨額赤字へ、ポテチも極度の不振の画像1「Thinkstock」より

「プロ経営者」の1人、カルビーの松本晃会長兼CEO(最高経営責任者)が、初めて試練のときを迎えている。ジャガイモ不足によるポテトチップスショックに次ぐ北米ショックで、2018年3月期の業績予想を下方修正した。

 従来は売上高を前期比3%増の2600億円、営業利益は4%増の300億円、純利益は2%増の190億円と予想していた。それが売上高は1%増の2560億円、営業利益は5%減の275億円、純利益は6%減の175億円に下方修正した。年間配当も従来予想の46円から42円に4円引き下げる。カルビーの減益は09年3月期に連結決算を導入して以来、初めてのことだ。

 17年4~9月期決算を発表した翌日の10月31日の東京株式市場。今期の業績の下方修正と配当の減額を嫌気してカルビー株が売られ、一時、前日比330円(7.9%)安い3835円まで下落した。11月、12月とも株価は4000円の大台を割ったままで推移している。

 17年4~9月期の連結決算の売上高は前年同期比4%減の1182億円、営業利益は25%減の103億円、純利益は12%減の70億円と減収減益となった。

 国内では、昨年夏の台風の影響でジャガイモが不作となり、一部商品は販売中止に追い込まれた。原材料の調達コストがかさみ、売り上げ、利益の両面で足かせにとなった。4~9月決算で主力のポテトチップスの売り上げは12%減の314億円にとどまった。

 北米事業は極度の不振に見舞われた。売上高は10%減の50億円、営業利益は1億9500万円の赤字(前年同期は8億3200万円の黒字)に転落した。大口量販店との商談がまとまらず、新商品の投入も遅れた。

 松本氏が会長兼CEOに就任した09年以降、米国市場の本格的な開拓が始まった。豆を使ったスナック菓子がヘルシー志向に乗って売れ、16年3月期の北米事業の利益は28億円にまで伸びた。

 2年前に米国で2番目の工場のミシシッピ川の工場が完成したが、見込んだほどの注文が入らず、新工場の操業も安定しなかったことから反転攻勢に出られず、結果的に今期の北米ショックにつながった。

2ケタの連続営業増益がストップ

 松本氏はプロ経営者として評価が高い。マスコミ受けする派手なパフォーマンスはないが、投資家を唸らせる実績を積み上げてきた。

 カルビーの3代目社長で、創業者松尾孝氏の3男である松尾雅彦氏は、会社をさらに成長させるために「資本と経営の分離」を決断した。同族経営と訣別し、外資系企業と資本提携、株式上場に踏み切った。

 その松尾氏が白羽の矢を立てたのが松本氏だ。伊藤忠商事出身で、赤字経営が続く伊藤忠の医療機器販売子会社、センチュリーメディカルの業績を黒字に転換させた。6年で売上高を20倍に急伸させ、業界のトップレベルに引き上げた。

 伊藤忠を退職すると、世界首位の医療機器メーカー、米国のジョンソン&ジョンソン(現J&J)に転じた。99年から07年末までJ&J日本法人の社長を務め、9年間で売上高を3.6倍にした。売上高営業利益率は驚異的ともいえる50%を超え、これを維持し続けた。

 松本氏の手腕に惚れ込んだ松尾氏が三顧の礼をもって招聘した。09年6月、松本氏はカルビー会長兼CEOに就任した。

 11年3月11日、東日本大震災が発生した日にカルビーは東京証券取引所1部に新規上場した。毎年、最高利益を更新し続ける松本氏の経営手法は“松本マジック”と呼ばれた。上場以来、カルビーはほぼ一貫して営業2ケタ増益を達成してきた。好業績への期待感から株価が上昇するという好循環が続いた。

 15年4月10日、株価は5700円を付け上場来の高値を更新した。株式の時価総額は7612億円。上場4年で企業の価値は11.4倍となった。

 だが、舞台は突然、暗転した。

 16年8月、北海道に相次いで台風が上陸し、カルビーに激震が走った。この台風でジャガイモの生産が壊滅的被害を受けたのだ。カルビーは使用するジャガイモの7割を北海道産で賄っている。北海道産ジャガイモの不足が経営を直撃した。

 ポテチショックで17年3月期の連結決算の営業利益は288億円と3%の伸びにとどまった。最高益はかろうじて更新したが、上場以来続いた2ケタ増益の勢いが失せた。これに北米ショックが追い打ちをかけたかたちだ。北米事業が赤字に転落するため、18年3月期の営業利益は275億円と前期より5%の減益になる。「2ケタの連続営業増益」という輝かしい記録にピリオドが打たれる。

 松本氏が成長分野として期待をかけるのは、海外事業だ。北米事業は「量販店向けの販売を拡大し、18年4月以降に単月の黒字化を目指す」としている。

 海外事業の切り札はシリアル食品「フルグラ」の中国輸出だ。シリアルとは朝食用穀物加工品のこと。8月に北海道千歳市に新設した工場からフルグラの中国輸出を始めた。アリババグループが運営する越境通販サイト「天猫国際」を通じて販売し、3年以内に200億円の売り上げを目指す。

 上海で行った輸出発表会見で松本氏は、「中国は日本の2倍の市場規模を持つフルグラの有望市場」と期待を込め、「フルグラは昨年300億円を売り上げた商品。2020年までに(中国向け200億円を含め)500億円に伸ばしたい」と語った。

 カルビーは再び成長軌道に戻せるのか。19年3月期に「営業利益2ケタ増」を達成できるかは、中国でのフルグラの販売にかかっている。

 10月30日の決算説明会で松本氏は「今はトータルで負け越しているが、負けてたまるか」と自身を鼓舞した。上場以来初の減益という事実は重い。18年春までに反転のきっかけをつかむことができるだろうか。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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