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楽天、携帯電話参入は「終わりの始まり」か…無謀な6千億円投資&一から基地局整備

文=編集部
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大手3社の厚い壁

 携帯電話市場は、NTTドコモ(シェア40.8%)、KDDI(au、同28.3%)、ソフトバンク(22.2%)の3社で90%以上のシェアを握る寡占状態である。楽天は果たして10%(1500万件)の契約を獲得できるのであろうか。そのための方策として、低価格路線が思いつくが、料金を低くしユーザーの求めるサービスを提供する通信インフラ会社になるのは容易ではない。

 そもそも楽天が、通信インフラ事業という、地道で地味なビジネスに興味があるという話は最近まで聞こえてこなかった。

 楽天の山田善久副社長は12月14日のアナリスト向け会見で、利用者獲得について「約1500万人のクレジットカード会員を抱えるなど、(楽天には)ブランド力がある」と語った。しかし、楽天カードは誰でも簡単に会員になれる。実行可能なサービスとしては、楽天会員が蓄積したポイントで電話料金を払えるようにすることぐらいだろう。大手キャリア(通信電話会社)も顧客の囲い込みを急いでおり、楽天は乗り換えを促すような超安値を提示するしかない。だが、そうすれば一層、赤字が膨らむことになる。

 最終的に楽天がつくる携帯電話会社は、ソフトバンクグループの10兆円ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に買い取られるといった未来図を描くことができるかもしれない。

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク3社とも楽天参入の報道で株価は下落したが、楽天の「終わりの始まり」という、窮極の局面は、まだ楽天の株価に織り込まれていない。4ケタ(1000円台)の株価の維持は難しいとの声が増えている。NTTドコモの牙城は崩せないとみられているからだ。

 クレディ・スイス証券は、楽天のキャリア参入、サービス開始当初の2020年に200億~300億円程度の営業赤字になる可能性があると、12月14日付リポートで指摘した。株式市場ではネガティブな見方が横溢している。

 楽天の6000億円の設備投資というのは東京、大阪、名古屋(福岡、札幌が入るのかは不明)だけを自前の回線にして、残りの地域はNTTドコモなどから借りることを想定しての金額と分析するアナリストもいる。だが、他社の回線を借りるコストが収益を大きく圧迫することになる。

 第4の携帯電話会社というのは茨の道なのである。「楽天が参入しても、NTTドコモの厚い壁に跳ね返されるだけだ」との冷めた見方をするアナリストばかりだ。

 12月17日付日本経済新聞の社説は、『楽天の新規参入を機に携帯市場の活性化を』とのタイトルで総務省に、新規参入者を支援するように注文をつけた。

 日経ヴェリタス(日本経済新聞社/12月17日号)も、「楽天の主力はネット通販と金融事業だ。携帯電話事業をネット通販などに顧客を引き込む材料と見なせば、『携帯単独の損益が赤字でも問題はない』との見方もある」としている。

 楽天は12月14日のアナリスト向け説明会で「電波を取得できるかどうかわからない」として、携帯電話事業の詳しい説明をしなかった。総務省が新たな周波数を割り当てるのは18年3月。「デキレース」(通信大手の総務省担当者)との見方を否定するためなのか。はたまた、本当に事業内容が詰まっていないのか。詳細な事業計画が示されるまで、投資家の不安は消えない。

EC事業の揺らぎが携帯電話事業参入の要因か

 日本貿易振興機構(JETRO)によると、ECの国内シェアでアマゾン・ドット・コムが20.2%で首位に立った。楽天は僅差(20.1%)で2位。このショックは大きかった。

 電子商取引の顧客の減少は金融事業の先細りにつながる。そうなるとECを核に多様なサービスを展開する楽天経済圏全体が危なくなる。携帯事業参入は、“アマゾンエフェクト”と断じたアナリストもいる。

 第4の電話会社はECの顧客を楽天グループに引き留めるための賭けとの見方が強い。三木谷氏は記者会見せず、ツイッターで「楽天会員は9000万人を超えて、(携帯電話事業への)参入は自然の流れ」とつぶやいただけだ。

 第4の携帯電話事業会社は、地方では引き続きNTTドコモの回線を借りる片肺飛行である。NTTドコモとも、楽天は自前の回線を持つ都市部では敵同士になる。KDDI、ソフトバンクが楽天潰しに乗り出すのは目に見えている。

 18年1月4日、三木谷氏は「技術が進歩し、機器も安くなっている。後発のメリットは大きい」と東京都内で記者団に語った。「(19年中を予定する)サービス開始時に(楽天グループ全体で)300万人超の会員でスタートできる」との見通しを明らかにした。だが、10年後に10%(1500万人)の契約を目指すにしては、ロケットの発射台(300万人)はかなり低いと言わざるを得ない。

 17年12月に“第4の携帯電話会社”構想を明らかにしてから、次々と厳しい現実が明らかになっていることと、この日の三木谷氏の発言は無縁ではない。

 楽天の株価が1月5日に一時、988円(前日比44円安)の昨年来安値をつけた。終値は1013.5円(18.5円安)で1000円台を回復したが戻りは鈍い。野村證券は「Buy(買い)」から「ニュートラル(中立)」に格下げした。携帯電話事業への参入で事業環境の不透明さが高まったと判断した。
(文=編集部)

【追記】

 楽天の株価の下げが止まらない。

 1月17日、一時、前日比1%安の958円をつけ、昨年来の安値を更新した。終値は959.5円。反発力はない。

 新規参入を表明した携帯電話事業の投資負担に対する懸念に加え、主力のネット通販事業の競争激化で利益が伸び悩んでいることが、再度、蒸し返されている。外国人投資家の見切り売りが下げの原因との指摘もある。

 2016年2月に942.7円、12年には641円という安値がある。16年の安値を下回るようだと、損失覚悟の売りが広がり、下値のメドが見えなくなる。

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