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牧田幸裕「得点力を上げるための思考再構築」

ユニクロもセブン&アイも「オムニチャネル」を掴み切れていない

文=牧田幸裕/信州大学大学院 経済・社会政策科学研究科 准教授

 先日ラルフローレンで買い物をしたのだが、こういう消費者体験をすることができた。ネットでラルフローレンのおしゃれなダウンジャケットを見つけ、試着をしたいと思い銀座三越へ出かけた。しかし、欲しい色がなく違う色のダウンジャケットでサイズを試した。店員が「いかがですか?」と言うので、「サイズは良いんだけど、欲しい色が違うんです」と返事をすると、「少々お待ちください」と言い、バックヤードに入っていった。

 数分後、その店員が「お待たせ致しました。今、銀座には在庫がないのですが、新宿にも上野にもこのお色の在庫がございます。新宿や上野でお取り置きもできますし、明日銀座に在庫を移動させることも可能です。または、ご自宅へお届けることも可能です」と説明してくれた。これがクロスチャネルである。サプライチェーンを統合し、ロジスティクスは顧客のリクエストに応じ変幻自在。非常に便利で、顧客満足度が高くなる。

 このクロスチャネルをオムニチャネルと呼ぶのが、セブン&アイ・ホールディングスである。セブン&アイはオムニ7という“オムニチャネル”を運営しているが、「オムニチャネルとは、リアル店舗やオンラインストアなどの販売経路や流通経路を統合し、どの販売チャネルからも同じ商品を同じ価格で購入できるようにすることです」と定義しており、サプライチェーンの統合がなされている。今の日本企業のチャネルの進化としては、最前線にある企業のひとつであり、優れたチャネルの進化であることは間違いない。しかし、これは今まで述べてきたようにクロスチャネルにすぎず、オムニチャネルではない。

 では、オムニチャネルとはなんなのか?

オムニチャネルとクロスチャネルの違いは、顧客理解

 オムニチャネルとは、企業が消費者と接するリアル店舗やECチャネルを統合し、チャネルにまたがった購買を可能とし、ユーザーIDの統合と顧客理解から最適な購買体験を提供するチャネルである。「……購買を可能とし」というところまではクロスチャネルと同じ定義だが、「ユーザーIDの……」というところからは、オムニチャネル独自の定義になる。すなわち、顧客一人ひとりをID化し、購買行動履歴を蓄積し、そのデータをもとにOne to Oneマーケティングを行うことに、オムニチャネルの特徴があるのである。この顧客理解に力を入れているのがAmazonであり、ユニクロを運営するファーストリテイリングであり、ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイであり、洋服の青山を運営する青山商事だ。

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