ビジネスジャーナル > 企業ニュース > フグの肝、食べると死の恐れ  > 2ページ目
NEW
垣田達哉「もうダマされない」

フグの肝、食べると死の恐れ…安全な店などない、佐賀県が可食化を国に要請

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表

フグのロシアンルーレット

 さらに11年10月、佐賀県内の事業者が佐賀県に対し、毒性検査で有毒ではないことを確認した養殖トラフグの肝臓を可食化する提案を行った。佐賀県は第三者委員会を設置し、審議の結果妥当と判断し、事業者と共同で厚労省に提案書を提出した。それを受け厚労省は16年4月、食安委に「提案者である佐賀県内の養殖場において陸上養殖されたトラフグの肝臓の一部を1匹ずつ取って検査を行い、フグ毒が検出限界以下の場合、提案者のレストランに限定して提供する場合の安全性についてリスク評価」を依頼した。海ではなく、隔離された陸上で養殖し、しかも1匹ずつ肝臓の検査をするから問題ないという提案だった。

 この提案に対し食安委は「フグの毒化機構は未解明で、陸上養殖されたトラフグの肝臓であっても、その危害要因及び制御するべき点を特定することができない」「個別の毒性検査の方法が、陸上で養殖されたトラフグの肝臓の安全性が十分確保されているとは判断できない」「肝臓の一部を検査することにより、肝臓全体の安全性を保障できるとは判断できない」「分析対象物質をフグ毒(テトロドトキシン)のみとすることが、陸上養殖トラフグの肝臓の安全性を確保する上で妥当とは判断できない」という理由で、「食品としての安全性が確保されると確認することはできない」と結論づけた。

 この2回目の評価結果は、17年3月に出されている。まだ1年前のことだ。1回目の提案から10年以上経過した今でも、食安委はフグの毒化機構は解明できていないとしている。フグの肝臓全体が毒に汚染されているとは限らないので、「肝臓の一部を検査しても、肝臓全体が安全かどうかはわからない」というのも至極妥当な結論だ。

 フグ毒は、同じ種類のフグであっても汚染度合いは異なる。個体差があるからこそ、フグの肝臓を食べた人がすべて食中毒になるわけではない。しかし、いつでもどこでも、汚染されたフグはいる。誰かが食べて問題なかったからといって、自分も大丈夫だとは限らない。フグの危険部位を食べるということは、まさにフグのロシアンルーレットなのだ。

 今回のように、スーパーなどの小売店で肝臓が販売されていることはないと信じたいが、禁止されていることを知りながら「客の求めに応じて提供する店がある」という噂は耳にする。フグの肝臓や牛の生レバーなど、禁止されると食べたくなる人もいるようだが、命知らずもはなはだしい。「フグの肝臓を食べるということは、生死にかかわる」ということを、肝に銘じてほしい。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

フグの肝、食べると死の恐れ…安全な店などない、佐賀県が可食化を国に要請のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!