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杉江弘「機長の目」

日本の新政府専用機、報じられない安全面の危険性

文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長
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 では、なぜそのような古いジャンボ機をアメリカ政府は今も使っているのか。答えは、安全性に優れているからだ。エアフォース・ワンは、日本にはひとりもいなくなった航空機関士や航空士(ナビゲーター)も搭乗し、2名のパイロットと合わせて計4名で運航されている。

 その理由は、たとえば機内火災やナビゲーショントラブルなどの重大な緊急事態になっても、適切に対処できるからである。火災に対しては航空機関士が消火に専念できるし、IRSなどのナビゲーション装置がすべて失われても、航空士が古くから用いてきた天測(太陽や星の見え方で自機の位置を計測する)によって目的地まで誘導できるわけである。ボーイング747-200Bのコックピットの天井には、そのための天測用窓が残されているのである。

 ボーイング777という2発機は、燃費が少なく経済性が優れているために多くの航空会社で採用されているが、政府専用機では燃費は考慮せずに安全性だけを考えればよい。普段はおよそ何事にもアメリカに「追随」する日本政府が、機種選定にあたってなぜアメリカを見習わないのか不思議でならない。一体、防衛省と外務省、それに国土交通省はこの問題で真剣に議論を重ねたのか疑問であり、その内容の情報公開を求めたい。

 仮に議論が不十分であるならば、まだ時間が残されているので、一度立ち止まり、最良の結論を出すべきであろう。
(文=杉江弘/航空評論家、元日本航空機長)

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

杉江弘/航空評論家、元日本航空機長

1946年、愛知県生まれ。1969年、慶應義塾大学法学部卒業。同年、日本航空に入社。DC-8、B747、エンブラエルE170などに乗務する。首相フライトなど政府要請による特別便の経験も多い。B747の飛行時間では世界一の1万4051(機長として1万2007)時間を記録し、2011年10月の退役までの総飛行時間(全ての機種)は2万1000時間を超える。安全推進部調査役時代には同社の重要な安全運航のポリシーの立案、推進に従事した。現在は航空問題(最近ではLCCの安全性)について解説、啓発活動を行っている。また海外での生活体験を基に日本と外国の文化の違いを解説し、日本と日本人の将来のあるべき姿などにも一石を投じている。日本エッセイスト・クラブ会員。著書多数。近著に『航空運賃の歴史と現況』(戎光祥出版)がある。
Hiroshi Sugie Official Site

Twitter:@CaptainSugie

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