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リンガーハット、大量閉店から顧客満足度1位&7期連続増収へ…真逆の幸楽苑は停滞

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
リンガーハット、大量閉店から顧客満足度1位&7期連続増収へ…真逆の幸楽苑は停滞の画像1リンガーハットの店舗(撮影=編集部)

「長崎ちゃんぽんリンガーハット」や「とんかつ濱かつ」を展開するリンガーハットの業績が好調だ。1月11日に発表された2017年3〜11月期の連結決算は、売上高が前年比4.3%増の338億円だった。特にリンガーハットが牽引し、同事業の売上高は前年比5.0%増の257億円と大きく伸張している。

 筆者は先日、都内のリンガーハット店舗を訪れた。昼時ということもあり、店内は老若男女の客で賑わっていて、席待ちの行列もできていた。店内のある若い女性は7種類の国産野菜を480グラム使用した「野菜たっぷりちゃんぽん」を食べていた。ある年配の男性は7種類の国産野菜を367グラム使用した「野菜たっぷり皿うどん」を頬張っていた。

 リンガーハットは野菜をたっぷり使用したメニューが豊富で、昨今の健康志向の高まりを背景に人気を博しているようだ。厚生労働省が推進する健康づくり運動「健康日本21」では、健康増進の観点から1日350グラム以上の野菜を食べることを推奨しているが、リンガーハットにはその要件を満たすメニューも少なくない。また、使用する野菜は09年10月から全店で100%国産化した。10年には麺に使う小麦を、13年にはぎょうざに使う小麦粉をすべて国産に切り替えている。

 美容と健康に良いというイメージのためか、リンガーハットは汁物の麺料理を提供する店のなかでは女性客が多いほうだろう。女性客の取り込みが見込めると判断してか、11年6月に女性向け新業態ちゃんぽん店「リンガール東京」の1号店を東京・池袋にオープンしたほどだ。「地産地消」「医食同源」をコンセプトとし、女性を意識したメニューを導入した。ただ残念なことに、同店は閉店し今はリンガーハットに変わっている。

 リンガーハットの顧客満足度は高まっている。日本生産性本部が発表する「JCSI(日本版顧客満足度指数)」の飲食部門において、リンガーハットの顧客満足度の順位が上がっているのだ。リンガーハットの13、14年度の順位は5位以下の圏外だったが、15年度は3位に、16年度は4位に食い込んだ。そして、17年度は丸亀製麺やモスバーガーなど並み居る強敵を退け、初の1位の座を獲得した。

 近年の業績も好調だ。17年2月期の売上高は前年比6.6%増の438億円、純利益は27.4%増の16億円で、7期連続の増収、5期連続の増益となった。売上高は7年前の10年2月期と比べて35.4%も増加している。

リンガーハットの歴史

 ここで、リンガーハットとはどのような企業なのかみてみよう。

 リンガーハットの歴史は1962年7月にまで遡る。長崎市に「とんかつ浜勝」(「とんかつ濱かつ」の前身)を創業したのが始まりだ。74年8月に現在のリンガーハットの原型となる「長崎ちゃんめん」を長崎市にオープンし、九州地方で出店を重ねていった。77年にリンガーハットに名前を改めた1号店を福岡県にオープンし、2年後の79年には埼玉県に首都圏初となる店をオープンした。

 リンガーハットよりもとんかつ濱かつのほうが歴史が古い。だが、成長はリンガーハットのほうが早く、85年6月に100号店、05年3月に500号店を出店している。一方、とんかつ濱かつは06年2月にようやく100号店を出店した。17年11月末時点の国内店舗数はリンガーハットが640店なのに対し、とんかつ濱かつは約110店と5倍以上の開きがある。

 成長著しいリンガーハットだが、少し前までの業績は必ずしも順調とはいえなかった。08年9月に米大手投資銀行グループのリーマン・ブラザーズが経営破綻した余波、いわゆるリーマンショックの影響で日本の個人消費支出が急減速し、リンガーハットも直撃した。それまで好調だった売上高は、09年2月期に前年比で3.3%減少した。10年2月期はさらに落ち込み、前年比で8.5%も減っている。

 そうしたなか、リンガーハットは思い切った収益構造改革を断行した。主に郊外型立地において不採算店50店を閉店し、成長が見込める大型ショッピングセンター(SC)のフードコート内を中心に39店を新規出店したのだ。大量閉店に伴い減損損失など大幅な特別損失を計上し、純利益が24億円の赤字に陥るも、この思い切った改革がのちの好業績につながっていった。

郊外型店舗からの撤退で好業績

 当時、郊外型立地は厳しい状況に置かれていた。単身世帯や共働き夫婦が増加し、人々の都心回帰が進んでいたためだ。郊外に乱立したSCに客足を奪われていったことも影響していただろう。

 リンガーハットはリーマンショック直前の08年2月期末では郊外型立地が7割以上を占めていたが、SCのほうが集客力があり出店しやすいということもあったため、リーマンショック後は郊外型立地を減らし、SC内型立地を増やしていった。その結果、17年2月期末の郊外型立地は4割以下にまで減っている。

 リンガーハットは郊外型立地を減らすことで業績を回復させることに成功した。反対に、郊外型立地にこだわったことが災いして業績が停滞した企業もある。ラーメン店「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングス(HD)だ。

 幸楽苑はリンガーハットと同じく郊外を中心に出店を重ねて成長してきた。しかし、14年3月期以降は店舗数が伸び悩み、売上高も停滞するようになった。17年3月期の売上高は前年比1.0%減の378億円で終着している。16年10月に異物混入問題が発覚したという特殊要因もあるが、郊外型立地にこだわったことが業績の停滞に結びついたと筆者は考えている。

 一方、繁華街立地が中心のラーメン店「日高屋」は今でも店舗数を伸ばし、運営企業のハイデイ日高は増収を続けている。17年2月期の売上高は4.7%増の385億円だった。また、外食大手のすかいらーくは近年都心部への出店を強化しており、SCや駅前に集中出店している。すかいらーくの業績も堅調だ。

 このように、リンガーハットを含むSCや駅前を中心に出店している企業は比較的好調だ。さらにリンガーハットは、健康志向の高まりが追い風になっている。加えて「長崎ちゃんぽん」という独特のジャンルで勢力を築いてきたことも大きいだろう。こういったことがリンガーハットの大きな武器となっているのだ。好調な業績がいつまで続くのかに注目したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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