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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

内科・外科志望医が激減、眼科志望医ゼロの県も…新専門医制度失敗で地方の医療崩壊

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
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 遠藤氏らが用いた「平成26年都道府県別医籍登録後3―5年目の医師数」とは、厚労省が2年に1度実施している「医師・歯科医師・薬剤師調査」の結果だ。これは統計法に基づく悉皆調査で、「性、年齢、業務の種別、従事場所及び診療科名等による分布を明らかに(厚労省ホームページより)」することを目的とする。限界もあろうが、今回の研究で比較対象とするには、もっとも相応しい。

 まずは診療科の比較だ。図1をご覧いただきたい。内科が激減し、麻酔科、眼科、精神科などのマイナー科が増加していることがおわかりいただけるだろう。内科は2012~14年と比較し、5%減少した。舛添要一氏が厚労大臣の時に医学部定員を増やしたため、今年度、専門研修を始めるのは12~14年の平均(6926人)よりも12%も多かった。内科は実質的に2割減である。

 全医師に占める割合は、過去3年間の38%から32%へと6%も低下した。同じように低下した診療科は外科(11%から9%)だ。まさに、医療の中核を担う診療科を志す医師が減り、マイナー科が増えたことになる

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深刻な医師の地域偏在

 地域偏在に与える影響は、さらに深刻だった。すべての診療科で東京一極集中が加速した。図2は内科の状況を示す。東京は77人増加した。周辺の千葉(30人減)、埼玉(10人減)、神奈川(5人減)から医師を吸い寄せたことになる。

 深刻なのは全国で内科志望医が15人以下の県が11(秋田、富山、福井、鳥取、島根、山口、徳島、香川、高知、佐賀、宮﨑)もあることだ。高知に至っては5人である。外科も同様だ。東京は69人増加した一方、静岡は20人、神奈川は10人、千葉は7人減少した。14の県で志望者は5人以下だ(青森、山形、群馬、山梨、福井、奈良、島根、山口、徳島、愛媛、香川、高知、佐賀、宮﨑)。群馬、山梨、高知に至っては1人である。

 志望者が激増した眼科ですら、一極集中だ。東京は36人増加し、2位の京都(12人増)を大きく引き離す。一方、16の県で志望者が減少し、青森・山形・新潟・山梨・長野・奈良・徳島・大分・長崎では志望者はいなかった。他のマイナー診療科も状況は変わらない。このままでは、地域医療は間違いなく崩壊する。

 新専門医制度については、全国市長会をはじめ、多くの関係者から懸念が表明されていた。専門医機構は、このような懸念を「無視」して強引に進めた。彼らの「公約」は守られなかった。吉村理事長以下幹部は原因を究明し、制度を見直すこと、および責任をとる必要がある。医師の「自律」が問われている。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

●上昌広(かみまさひろ)
1993年東大医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。 虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の診療・研究に従事。
2005年より東大医科研探索医療ヒューマンネットワークシステム(後に先端 医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年3月退職。4月より現職。星槎大学共生科学部客員教授、周産期医療の崩壊をくい止める会事務局長、現場からの医療改革推進協議会事務局長を務める。

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