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神戸山口組と任侠山口組のナンバー2を同日に逮捕した警察当局の狙い…本部事務所使用をめぐる攻防か

文=沖田臥竜/作家
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神戸山口組と任侠山口組のナンバー2を同日に逮捕した警察当局の狙い…本部事務所使用をめぐる攻防かの画像1神戸山口組ナンバー2の寺岡修会長

 神戸山口組と任侠山口組の両組織に激震が走ったのは、2月7日のことだ。

 兵庫県警が、神戸山口組若頭である俠友会・寺岡修会長を、無車検の普通自動車を運転していた疑いがあるとして、道路運送車両法違反で逮捕したのだ。同容疑では寺岡会長のほか、同会幹部組員2人が一緒に逮捕されている。

 この聞きなれない罪名に、業界関係者の間では「いつもの嫌がらせによる逮捕。俗にいう『いやきち』だ。どうせ起訴などできない」という声が上がっていた。

 それもそのはずである。寺岡会長といえば、神戸山口組若頭という地位にあり、自身も多くの配下組員を抱える親分なのだ。その親分が、運転手を付けずに自ら運転するなど、ヤクザ社会の常識からみても考えられない。ましてや、山口組では3つに分かれてから、いつ過激な抗争へと突入してしまったとしてもおかしくない状況下で、寺岡会長が自らハンドルを握り無車検の車を運転することなど、あり得ないといっていいだろう。

 現に兵庫県警も、それを承知の上で寺岡会長の逮捕に踏み切ったようで、当局が逮捕容疑として挙げているのは、一緒に逮捕された幹部組員が現在、使用禁止の仮処分決定を受けている俠友会本部事務所付近で無車検の車を運転していたのを寺岡会長が認知していたはずというもの。これには法曹関係者も「これだけで組長の責任を問うのは無理筋すぎる」と苦言を呈するほどだ。

 だが、当局にはそこまでしてでも寺岡会長を逮捕したい事情があったようだ。それは、俠友会本部事務所にまつわるものだと、法律に詳しい専門家は話している。

「仮処分決定については、あくまで組事務所としての使用を制限したものであって、住居としての使用制限をかけたものではありません。そのため、寺岡会長と一緒に逮捕された2人の組員は、住民票を俠友会本部に置いていたようです。そうすることによって、住居として俠友会本部に出入りすることが可能というのが、俠友会側の理屈です」

 ただし問題は、住民票を俠友会本部に置くことは確かに禁じられていないものの、住居として使用することも明確には認めていないという点だ。

「無車検の車を運転していたとされる幹部組員は、1月下旬に俠友会本部に住民票を移動させたばかりという話です。これによって、すでに住民票を俠友会本部に置いていた寺岡会長と、もうひとりの幹部組員、合わせて3人が俠友会本部に住民票を置いていることになったのです。警察当局としては、3人も事務所に住民票を置き自由に出入りしているということは、十分に組事務所としての機能を果たしているという判断をし、防犯カメラからその動きなどを監視し続けていたようです」(同)

 事実上、組事務所として運営されていると立証できれば、法的に制裁金を科すことが可能になるという。そのため、俠友会本部に家宅捜索をかけ、関係書類などからも組事務所として使用しているという実態を明らかにしたかったのだ。今回の道路運送車両法違反容疑での逮捕は、それを目的とした“別件逮捕”とも見て取れる。現に寺岡会長らを逮捕後、すぐに兵庫県警は俠友会本部に家宅捜索をかけている。

任侠山口組本部として認定予定の真鍋組をめぐっても……

 現在、3つに分かれた山口組では、どの組織においても、仮に事務所の使用禁止の処分を受けた際の対策案として、俠友会と同様に事務所に組員の住民票を移しておくことが検討されていると聞く。それを見越した上で、当局サイドとしては、同様の手口は許さないという厳しい姿勢を見せつけ、使用禁止処分が下った組事務所への組員の出入りを禁じようとしているのではないだろうか。

 同じように、医療費を騙しとった疑いがあるとして同日に大阪府警に逮捕された任侠山口組本部長である四代目真鍋組・池田幸治組長も、以前から真鍋組本部に住民票を置いていた。そして兵庫県公安委員会が9日に発表した内容によると、任侠山口組を指定暴力団にするために必要な同団体側への意見聴取を、26日の4時30分から兵庫県警本部で行うとしており、さらに指定のために認定が必要な組織の拠点事務所を、尼崎にある四代目真鍋組本部にすることに決めたようなのだ。

 寺岡会長の逮捕と時を同じくして、この本部に住民票を置いていた池田組長が逮捕されたことを単なる偶然一致と見るには、あまりにも不自然ではないだろうか。

「池田組長と一緒に逮捕されたのは、同じく真鍋組本部に住民票を置いていた家族の方と組員で、後は医療費の水増し請求に関与した疑いを持たれている接骨院の医院長です。この医院長は別としても、逮捕者3人が真鍋組本部に住民票を置いていたのをみると、今後、任侠山口組の拠点事務所として使用禁止処分が下った場合、住居として使用するという抜け道を許さないという当局の強い意志の表れのような気がしてなりません」(同)

 警察当局では、結成式や第1回目の記者会見を行った古川組本部を任侠山口組の拠点事務所とすることも検討されたのではないかとみている。だが、現在、古川組本部の使用については、神戸山口組傘下である三代目古川組・古川恵一総裁と任侠山口組傘下である古川組との間で所有権をめぐる民事裁判が行われているため、古川組本部を任侠山口組の拠点事務所として認定しづらい状態にある。そのため、古川組と同じく尼崎に本部があり、これまでも任侠山口組の定例会などを開催させてきた四代目真鍋組事務所を任侠山口組の拠点事務所に選んだのではないだろうか。

 また、任侠山口組の勢力は、1都1道2府12県、構成員460名と当局は見ているようだが、任侠山口組サイドでは、そうした点も聴聞される、26日に兵庫県警本部で開かれる意見聴取に応じるつもりは今のところないようだ。

 寺岡会長、池田組長の相次ぐ逮捕で、結果的に3つの山口組すべてのナンバー2が社会不在を余儀なくされたことになった。今後、このことが分裂した山口組にどのような影響をもたらすのか、注目されている。

(文=沖田臥竜/作家)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新小説『忘れな草』が発売中。

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