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孫崎享「世界と日本の正体」

韓国、北朝鮮との融和重視で米韓緊張突入か…米韓軍事演習のレベル低下要請の可能性

文=孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長
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 本件に関し、米軍準広報紙「星条旗新聞」が「駐韓米国大使をめぐる決定は北朝鮮への攻撃への新たな懸念を惹起(US ambassador decision raises new concern about ‘bloody nose’ strike on N. Korea)」という論評を掲載した。主要点は次の通り。

・著名な学者を駐韓大使候補から外すという米国政府の決定は、北朝鮮に対する軍事攻撃への懸念を増大させた。
・米国はすでに韓国に対し、チャの指名を非公式に伝えており、極めて異例の動きである。
・米国の対応には、さまざまなシグナルが流れるなか、トランプが一方的な先制攻撃に踏み切る証拠とみなす者もいる。
・トランプの発言は対話の用意を述べたり、北朝鮮を完全に破壊すると揺れている。
・韓国中央日報紙は論説のなかで、最終段階でのチャ大使の変更は米国が先制攻撃に関心があることを示す不吉なシグナルと書いている。
・トランプの一般教書での北朝鮮に対する強い文言の使用は憶測を呼んでいる。
・この決定は米国政権内に軍事行動と外交努力の間で見解の対立があることを示している。

 北朝鮮への圧力の主たる動きは、米韓軍事演習である。米国は平昌五輪期間中、米韓軍事演習を一時延期するとしているが、オリンピックが終われば再開するとの立場である。

韓国の文大統領の対応

 韓国にとって平昌五輪を無事終わらせることは、国際的評価を勝ち取るため、ぜひとも必要なことである。そのためには、北朝鮮が妨害工作を行わないことが強く求められていた。こうしたなか、韓国は北朝鮮の高官の訪問を要請し、ホッケー等に統一チームをつくるなどの策を出した。これが成功し、懸念された北朝鮮の妨害工作はない。

 こうしたなかでの北朝鮮からの南北首脳会談の提案である。文大統領は基本的に南北首脳会談に前向きである。だが、前述の通り、現在米国は北朝鮮の核開発を諦めさせることを最優先している。他方、北朝鮮は核保有国としての立場を確保したいとして、両者は根本的に対立している。

 さらに韓国側の姿勢を考えるときに重要なのは、仮に米国が北朝鮮に武力行使をした場合、北朝鮮が報復攻撃を行う可能性が高く、その目標は主としてソウルとなり、莫大な死傷者が出ることが想定される。したがって文大統領は、米国の軍事攻撃を避けたいとの思いがある。

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

孫崎享/評論家、元外務省国際情報局長

東京大学法学部在学中に外務公務員上級職甲種試験(外交官採用試験)に合格。1966年外務省入省。イギリス陸軍語学学校、ロンドン大学、モスクワ大学にてロシア語を習得し、在ソビエト連邦大使館を経て、1985年在アメリカ大使館参事官(ハーバード大学国際問題研究所研究員)、1986年在イラク大使館公使、1989年在カナダ大使館公使を歴任。1991年から1993年まで総合研究開発機構へ出向。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。

Twitter:@magosaki_ukeru

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