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「相馬勝の国際情勢インテリジェンス」

北朝鮮、南北会談の隠された目的…非核化の意思なし、米国も在韓米軍撤退は拒否

文=相馬勝/ジャーナリスト
北朝鮮、南北会談の隠された目的…非核化の意思なし、米国も在韓米軍撤退は拒否の画像1韓国大統領の特使 金正恩氏と面会(提供:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

 韓国の平昌冬季五輪を契機にした南北朝鮮による一連の高官会談で、南北首脳会談米朝首脳会談が実施される可能性が強まっている。今のところ、両会談ともに北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がイニシアティブをとって積極的に進めていることは明らかだ。

 この背景には、北朝鮮は昨年末時点で米大陸を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)や核ミサイルの完成のメドがついたこと、および米国を中心とする対北経済制裁が北朝鮮経済を厳しく圧迫していること、さらに、このまま推移すれば米軍による北朝鮮攻撃は不可避となり、金正恩指導部の存続は難しく、最悪の場合、金正恩氏や妹の与正氏ら最高指導部の命さえ危ないという強い危機感がある。

 金正恩氏としては、両会談で北朝鮮の体制維持を取り付けたうえで、北朝鮮の非核化の条件として、在韓米軍および米軍の核抑止力を含む朝鮮半島全体の非核化を提案、さらに、あわよくば制裁の解除を迫り、対北経済支援をせしめようとの思惑が働いているとみることができる。

キーパーソンは金永南氏

 まず、今回の南北間対話は、金正恩氏の特使として与正氏が訪韓したことで幕が開いた。金正恩氏は与正氏に親書を託し、文在寅韓国大統領に早期の北朝鮮訪問を招請し南北首脳会談を呼びかけ、文氏がこれを受け入れたことで、南北の融和ムードは高まった。

 実は、このサプライズ提案は韓国訪問団団長の金永南最高人民会議常任委員長が米軍による対北朝鮮攻撃の回避策として、金正恩氏を説得した結果、文氏に伝えられたとの情報がある。金永南氏は正恩氏が崇拝している祖父、金日成国家主席の側近として長年仕えており、北朝鮮の創始者である祖父をモデルとした「帝王学」の教育係として正恩氏に強い影響力をもっている。今回の韓国訪問団に正恩氏の妹、金与正党中央委員会第1副部長を加えるよう進言したのも金永南氏であるという。

 金永南氏は1928年2月4日、日本統治時代の平壌で生まれ、ちょうど90歳。名門の金日成総合大学を卒業、モスクワ大学にも留学。党のエリート幹部として党政治局員に抜擢され北朝鮮の外交政策の責任者を務め、金日成氏の演説草稿のほとんどを作成するほど金日成氏の信頼が厚かった。

 金日成氏死去後、金正日指導部時代の1998年、名目上の国家元首に当たる最高人民会議常任委員長に就任。2011年の金正恩指導部発足後も国家元首として、名目上の党序列第2位を維持している。北京の外交筋はこう分析する。

「50年以上も政権中枢で要職を歴任しながらも、文官として権力を握ろうという野心を持たず、金王朝を支え続けきた。この恬淡として好々爺然とした姿勢が、3代目で疑り深い金正恩氏の信頼を勝ち得た」

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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