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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

JALやANAと同等サービスでもお値打ち価格!「あいまい経営」の「ヘンな」航空会社?

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 また、FDAといえば、レッド、ピンク、イエロー、グリーンなど、派手な機材のカラーが話題となることも多い。こうしたカラーリングを行ったきかっけは、小さい機体はどうしても地味に見えるため、存在感を増すことが目的だった。現在、顧客の中には、「今日は何色かな?」と楽しみにしている人もいるという。さらに、新しい機材が導入されるたびに、「次は何色?」などと興味を誘うようにテレビのニュース番組などで取り上げられ、広告効果は抜群のようである。自社のウェブサイトにおいて「次号機は何色?」キャンペーンなども実施されている。

 こうした取り組みには、補修用のペンキの種類が多くなるなどのデメリットはあるものの、費用を大きく上回る効果を得ている状況である。

チャーター便によるビジネス展開

 FDAの旅客機の80名という定員は、おおよそバス2台分に相当する。こうした特性を生かし、旅行会社向けに機材をまるごと貸し出すチャータービジネスにも着手している。行き先は全国の主要な都市に加え、利尻島や久米島などの離島も人気だという。離島は乗継などで時間がかかるケースも少なくはなく、チャーター便の強みがより発揮される。

 また、離島で200人規模を受け入れることができる宿泊施設は極めて少なく、大手FSCの機材の定員を受け入れることは難しい。旅行を企画運営する旅行代理店のなかには、多くの会員を抱えている代理店も少なくはなく、80名程度なら高い確率で集客が見込めるため、リスクも低い。さらに、価格競争が激しい業界において、客単価の高いチャーター旅行は代理店にとって大きな利益をもたらす商品となる。

 一方、顧客にとって、近くの空港からダイレクトに目的地に到着できる利便性は高く評価されており、さらにはチャーター便という響きに特別感や優越感を抱く顧客も少なくはないであろう。またチャーター便での旅行という特別な商品を扱う旅行会社に対して、顧客がプレミアム感のようなものを感じる可能性もある。最後にFDAにおいても搭乗率などを気にする必要がなく、収益性のよいビジネスであると捉えられている。

 小型機の強みの追求、市場環境に対応した柔軟かつ迅速な行動、全社一丸となった徹底した独自の取り組みなどによる差別化は航空業界を超え、多くの企業が参考にすべき重要なポイントであるといえるだろう。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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