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金子智朗「会計士による会計的でないビジネス教室」

メディアの言葉遣いはメチャクチャではないか?

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「Thinkstock」より

 先日、ある有力ビジネス誌の取材を受け、それを先方が書き起こした原稿のチェックの依頼が来た。その中に次のような記述があった。

「黒字倒産とは、収入が支出を上回って利益が出ているのに、支払いができなくなって経営を続けられなくなる状態を指す。収支が黒字なのに支払いができなくなるのだ」

 私はこのようなことは絶対に言っていない。なぜならば、この文章、言葉遣いがメチャクチャだからだ。どこがおかしいかわかるだろうか?

「収入」「支出」はキャッシュに関する言葉


「収入」「支出」はキャッシュの出入りを意味する言葉だ。「収入」とは「キャッシュ・イン」であり、「支出」は「キャッシュ・アウト」という意味である。その差額を「収支」という。これらの言葉を使った時点で、それはキャッシュのことを意味するのである。

 黒字倒産における最大のポイントは、会計上計算される「利益」がキャッシュの動きと食い違っているところにある。だから、「利益」が黒字でもキャッシュがなくなって倒産することがあり得るのである。

 冒頭の記述は、「収支が黒字なのに支払いができない」と言っているが、これは「利益」と「収支」を混同している。収支が黒字なら支払いはできるし倒産もしないから、この文章はまったく意味をなさない文章になっている。「収入が支出を上回って利益が出ている」とも言っているが、これを言うなら「収益が費用を上回って利益が出ている」だ。

「収益」とは損益計算書におけるプラスの総称を意味する。具体的には売上高、営業外収益、特別利益である。損益計算書におけるマイナスの総称は「費用」だ。具体的には売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別損失である。「収益」と「費用」の差額が「利益」である。

「収益」という言葉はそれこそ誤解の多い言葉で、日常用語においては「利益」と混同されていることが非常に多い。「収益」はまだ何も引かれていないグロス概念である。それをネット概念である「利益」と混同するのは本来は決定的な間違いである。

アナウンサーキャスターも言葉を知らない


 経済や法律に関する言葉は、日常的にも使われる言葉が多いからか、本来の意味を知らないまま勝手な解釈で使われることが少なくない。それはアナウンサーやキャスターも例外ではない。

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