NEW
ジャーナリズム

『99.9』、ここが「あり得ない」? 裁判官と検察の「知られざる関係」

文=深笛義也/ライター、協力=山岸純/弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士
【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

裁判官の独立

 これまでの法廷ドラマであまり見られなかったが、『99.9』には笑福亭鶴瓶が演じる川上憲一郎という東京地裁所長代行が登場する。甲本雅裕が演じる遠藤啓介という裁判官の上司に当たる存在だ。

「裁判官というのは、検察官以上に独立した存在です。ドラマでは、鶴瓶が奥に座っていて、それに向かって裁判官たちが並んで座っているというシーンがありますが、そんな会社みたいな光景はないです。あれはドラマ的な演出でしょう。裁判官にはそれぞれ部屋があります。

 1969年に『平賀書簡問題』というのがありました。北海道夕張の長沼に航空自衛隊のナイキJ地対空ミサイル基地を建設するために、その予定地に対して、農林大臣が国有保安林の指定解除したんです。これに対して一部の地元住民が、自衛隊は違憲だから国有保安林の指定を解除を取り消せ、という訴訟を起こしたんです。札幌地方裁判所で争われたんですが、平賀健太という所長が担当裁判官に対して、原告の申し立てを却下する方向で、こうしたほうがいいよという詳細なメモを渡したんです。これが発覚して日本国憲法が規定している『裁判官の独立』を犯したということで、平賀所長は最高裁事務総局から注意処分を受けました。

 こういうかたちで明確に指示するとアウトです。ドラマでは、政府が少年法の犯罪の厳罰化を進めていく方針があって、鶴瓶演じる所長代行がそれに沿った判決を出させようと画策するという構図になっています。実際にはそういうことはないんです。所長代行が裁判官同士の集まりのなかで『いい判決、重い罪を書いてくれることを期待してます』みたいなことを言って、その後で『まあ、彼の事件ですから』みたいに付け加えるんですね。『厳罰の判決書けよ』と直接言ったりはできないですが、それを期待していて、なんとなくプレッシャーを与えている。あの感じは、現実の司法の世界をうまく描いていて、法曹関係者にとっては本当におもしろいシーンでした」

 インタビューには、弁護士法人ALG&Associatesにロースクールの授業でエクスターンとして所属する、早稲田大学大学院法務研究科の学生2人にもオブザーバーとして参加してもらっていた。法律を学んでいる立場から、宮澤裕登さんは指摘する。

「ドラマでは、東京地裁所長代行の川上が傍聴席にちょこんと座ってましたけど、あれは裁判官の独立を害することになってしまうと思います。裁判実務を知るための企画の一環で昨年の夏、裁判の傍聴に行った時に、ご担当頂いた裁判官の先生が、『私も裁判を見たいんだけど、裁判官の独立の観点から法廷に入れないんだよ』と言って、入られなかったのです。あのドラマはリアルなところが多くて毎回感心して見ていますけど、あのシーンだけはダメだなって思いました」

関連記事